入社7年目の金井聡史さんは施工管理を担当する。どのような工法で作業すれば、安全で工期が早いかを考え、現場を取り仕切る仕事だ。今では一つの現場を任されるまでになったが、入社当時は戸惑うことも多かったという。

 「大学は建築学科だったが、建築と土木は別。分からないことだらけで、施工管理の仕事が務まるのか不安だった。しかし研修教材を手元に置き、常に振り返ることで、『今日の現場の技術は、教材のここに書いてあることか』とつながると、一気に理解が進んだ」

 新人研修の講師を務めるのは入社2~5年目の若手社員。自身の経験から、どんな場面で新人が悩むかがよく分かっているので、教え方も具体的だ。フクザワでは同世代の若い社員が多く、交流する機会も多いため、新人が仕事上の疑問点を周囲に聞きやすい。

 配属先によって、どの研修を受けるかは、下の表のように細かく定められている。注目は、事務スタッフにもCAD(コンピューターによる設計)の操作を学んでもらうこと。他社では施工管理スタッフがする仕事を、フクザワでは事務スタッフが担うためだ。

カリキュラムを作成すると、誰にどんなことを学んでほしいかを整理して考えることができる。それぞれの研修時間も細かく定め、教育の漏れを防いでいる。こうした手厚い研修が新入社員の不安を解消する。「PASSION」は稲盛和夫氏の著書を読んで、仕事に対する考え方を学ぶ研修
カリキュラムを作成すると、誰にどんなことを学んでほしいかを整理して考えることができる。それぞれの研修時間も細かく定め、教育の漏れを防いでいる。こうした手厚い研修が新入社員の不安を解消する。「PASSION」は稲盛和夫氏の著書を読んで、仕事に対する考え方を学ぶ研修

 施工管理の社員は、日中は現場で作業内容の確認などに追われる。発注者に提出する書類作成は、残業や休日出勤で対応しがちだ。そこでフクザワでは、施工管理、現場社員の全員に一人一台タブレット端末を持たせ、随時現場から作業内容を本社に送信する。

 本社では事務スタッフが複数の現場の書類をまとめて作成するため、効率がいい。施工管理の社員も現場に専念でき、定時で帰宅できる。人件費を削減しようと間接部門の人員を減らす企業もあるが、逆にフクザワは間接部門を増員し、業務を効率化させている。

ヒントはスキーの検定

 この新人研修に象徴されるように、フクザワの社員教育はきめ細かい。社員の資格取得も全面的にバックアップ。施工管理の社員には土木施工管理技士や建築士などの取得のため、定期的に社内で勉強会や模擬試験を実施する。一方、現場の土木工事については、独自の社内検定をつくった。

 種類は、バックホウ(ショベル)の操作検定(1~6級)と型枠組み立ての検定(1~4級)の2つ。いずれも土木工事では欠かせない技術だ。検定は筆記試験と実技試験から成り、例えば「バックホウ1級」の課題、L字型の畦畔(けいはん=盛土)仕上げでは、5ミリの誤差で減点という高い難易度を求める。

 「地元飯山市はスキーが盛ん。スキーの検定をヒントに、土木でも検定制度をつくれば、社員が上級を目指して技術を磨いてくれると考えた」と福澤社長。最初はバックホウと型枠の技術が最も高い社員に相談し、「6級ならこうした技術」と決めていったという。

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