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車両認証を受けられず

 ところがこの原稿を書いている2018年12月末現在でも、アウディA8が実際の路上で使える自動運転機能はレベル2にとどまる。その理由は、レベル3の車両が満たすべき安全要件の国際基準が定まっておらず、車両認証を受けられないためだ。この国際基準は国連で議論されているのだが、まだ時間がかかりそうな状況である。

 一方で日本政府は2020年にレベル3の自動運転を実現することを目標にかかげており、国連での議論を待っているとこれに間に合わない恐れがある。そこで日本は国連の議論を待たずにレベル3の自動運転車を実用化するための準備を独自に進めてきた。具体的には、2018年9月に、レベル3およびその先のレベル4の車両に必要な安全技術のガイドラインを定めた。これにより、国連での議論を待たずに各メーカーは車両を製造する準備ができる。

 そして12月の末にパブリックコメントの募集が始まったのが本コラムの二つめのテーマである道路交通法の改正案だ。先の安全技術ガイドラインがクルマの製造業者の守るべき基準を定めたものであるのに対して、道路交通法は「道路で発生する交通上のすべての危険及び障害を防止、除去して、安全で円滑な交通を確保することを目的とする」(第1章第1条)法律である。先に触れたように筆者が驚いたのは、今回の改正案の中に「自動運転中の携帯電話の使用」を認める内容が含まれていたことだ。

 先ほど説明したように、アウディA8はレベル3の運転モードにおいて、車両に搭載されたディスプレイで可能な作業については許可していたが、携帯電話の使用までは認めていなかった。これは日本の完成車メーカーでも同じだ。ホンダは2020年の実用化を想定した自動運転の実験車両を2017年6月に公開したのだが、この車両では、スカイプを利用したテレビ電話がかかってきて、カーナビ画面の向こう側の女性と対話するというデモを披露した。しかし、これも車両に搭載されたディスプレイで実行できる作業であることに変わりはない。今回の道路交通法の改正案は、これまでの業界の「相場感」を上回る内容だったのに驚いたのだ。

 このパブリックコメントを経て、警察庁は2019年中に道路交通法の改正案を国会に提出、2020年に施行することを目指しているという。道路交通法の改正を待って、トヨタ自動車、日産自動車、ホンダなどの国内メーカーは相次いで高速道路でのレベル3対応の自動運転車を発売する見込みだ。ただし、車両の信頼性を高めるためにセンサーやECU(電子制御ユニット)を二重化するなどコストもかかるため、当面は高級車種に限られるだろう。

 これまで、自動ブレーキなどの安全装備がそうだったように、こうした自動運転機能も、徐々に低コスト化が進み、普及価格帯のクルマにも広がっていくはずだ。国連での安全要件の議論が長引けば、日本のメーカーがレベル3の実用化で、しかもレベル3での走行中はスマートフォンの使用を許すという自由度の高い形で、世界に先駆ける可能性が出てきたといえる。