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 VWがトゥーランなどにTDIを設定した背景にあるのは、日本市場におけるディーゼル車の根強い人気だ。例えば国内メーカーでディーゼルエンジン車に力を入れるマツダの場合、ティグアンと車格がほぼ等しいSUV「CX-5」のディーゼル比率は65%と、販売台数の約2/3を占める。ディーゼル車はガソリン車よりも15~20%程度燃費がいいうえ、ガソリンより軽油のほうが1L当たり30円程度安い。このため燃料コストはガソリン車の2/3程度で済む。しかも最近のディーゼルは低回転から力強いトルクを発生するうえアクセル操作に対する応答が速く、スポーティな走行を楽しむことができるようになった。今回VWのディーゼル車をこのコラムで取り上げようと思ったのは、不正なソフトウエアを搭載しないVWの最新ディーゼルの実力がどのようなものかを確かめてみようと思ったからだ。

トゥーランTDIが搭載する排気量2.0L・直噴ディーゼルターボエンジン(写真:フォルクスワーゲン グループ ジャパン)

 今回試乗車に選んだのはトゥーランTDIの上級グレードである「ハイライン」である。1.4L・直噴ガソリンエンジンを搭載する「トゥーランTSI ハイライン」に比べると、エンジンの最高出力はどちらも110kWで同じだが、最大トルクはTSIの250N・mに対して340N・mと36%も上回る。価格はTSIの387万9000円とTDIの407万9000円でちょうど20万円の差があるが、例えばマツダのCX-5の排気量2.0Lのガソリンエンジン仕様と2.2Lのディーゼルエンジン仕様を比べると約31万円の価格差があることを考えれば、価格差は抑えられているといえるだろう。

重装備のクリーンディーゼル

 VWが不正ソフトの搭載に手を染めた背景には、米国の厳しい排ガス規制があると考えられている。まともに対応しようとすると排ガス浄化装置にコストがかかり、しかも燃費や出力が低下してしまうという問題があったためだ。このためVWは、試験機で排ガスを計測しているときだけ規制値を満足し、実走行時は排ガス浄化性能を低下させて燃費や出力を向上させる違法ソフトを搭載していた。競合メーカーは、シンプルな構成の排ガス浄化装置を採用しながら良好な燃費と出力を実現するVWのディーゼル車を不思議に感じていたと言われる。

 これに対し、今回日本に導入されたディーゼル車は、当然のことながらこうした不正なソフトを導入していないので、現代の乗用車用ディーゼルエンジンで考えられる排ガス浄化装置はすべて搭載したような「重装備」のエンジンとなっているのが特徴だ。筆者が重装備と感じた二つの装備が尿素SCR(選択還元触媒)装置であり、もう一つが高圧・低圧の2系統を備えたEGR(排ガス再循環装置)だ。どちらも排ガス中のNOx(窒素酸化物)を減らす装置である。

トゥーランTDIのエンジンの構成。排ガス規制を達成するために“重装備”の浄化装置を備える(資料:フォルクスワーゲン グループ ジャパン)