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 一方、百度スマート運転事業チームの何鵬氏は、同社が進める自動運転のオープンプラットフォーム「アポロ」の開発プロジェクトについて解説した。最初のバージョンであるアポロ1.0がリリースされたのは2017年7月だが、それからわずか1年後の2018年7月には、アポロ3.0がリリースされ、2019年1月に米国ラスベガスで開催される世界最大規模のエレクトロニクス関連見本市「CES 2019」ではバージョン3.5をリリースする計画であることを明らかにした。すでにアポロはさまざまな実験車両に搭載され、高速道路を含む一般道路で実証実験に使われている。

中国の都市開発のイメージが一変

 2日目の地方視察では、主催者が用意したバスで雄安新区に向かった。雄安新区は北京の南、天津の西に位置し、どちらからもほぼ100km離れている。北京から雄安新区に向かう経路の途中には現在、北京の新空港が建設中だ。2019年に開港予定のこの新空港は北京大興国際空港と呼ばれており、現在の北京首都空港を上回る世界最大のターミナルを備えた巨大空港になる予定だ。筆者は、北京首都空港のメインターミナルである第3ターミナル(T3)の巨大さと、その近代的なデザインに、訪れるたびに感心させられているのだが、これを上回る巨大ターミナルというのはちょっと想像の範囲を超える。

雄安新区は北京の南、天津の西に位置し、どちらからも100km程度離れている(資料:中国政府)

 ただし、雄安地区への行程では、現代の中国が抱える課題を実感することにもなった。というのもこの日は朝からPM2.5の濃度が高く、北京市内はスモッグに覆われたような状態になっていたからだ。北京の市街地を出てからも、スモッグは晴れるどころかますます悪化し、視界不良のため高速道路は閉鎖になった。このため一般道路で雄安新区に向かったのだが、ひどいときで3~4m程度先までしか見通せなくなり、方向を見失った車両が霧の中から急に現れてぞっとするような場面もあった。そのたびにベテランの運転手が機敏に対応して無事に雄安地区に到着することができたのだが、この日の北京およびその周辺の大気の状態はAQIで500以上の「危険」レベルだった。

スモッグに覆われた北京市の中心部

 雄安新区は、河北省保定市の雄県、容城県、安新県を中心とした広さ1770km2の地域で、大きな特徴は、全体の面積の70%を緑地と湖が占めるように義務付けた「エコシティ」を目指していることだ。雄安新区内には白洋淀という湖があり、その周囲には葦の生えた湿地帯が広がっていてこの地域の観光名所になっている。この景観を生かした、水や緑と共棲する暮らしをイメージしているのが大きな特徴だ。

雄安新区の計画図。市街地の建設が予定されているのは白洋淀という湖の北だけで、あとの地域は緑や湖を保存することが予定されている(資料:中国政府)

 中国の新しい都市と聞いて、高層ビルが立ち並ぶ近代的な街づくりをイメージしていたのだが、実際には建物の高さは最大45mに制限されており、どの住宅からも300m歩けば公園に行けて、1km歩けば森に入れるような都市計画になっている。鉄道や駐車場、および電力配線やガスの配管といった交通インフラや生活インフラはすべて地下に配置して地上からは見えないようにするのも特徴だ。先に触れたように、地上を走る自動車は、すべて自動運転車にすることも計画されている。こうした雄安地区の目指す方向は、筆者が抱く中国の未来都市のイメージとは大きく異なっていた。