全5369文字

 一方の東芝エネルギーシステムズは、同社の水素事業への取り組み例として、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)や東北電力、岩谷産業と共同で福島県・浪江市に建設を進めている「福島水素エネルギー研究フィールド」を紹介した。同フィールドは太陽電池で発電した電力により水を電気分解して水素を製造するプラントで、CO2フリーの水素を製造するうえでの技術課題を確認・検証するのが建設の目的だ。2019年10月までに建設を完了させ、試運転を開始して2020年7月までに技術課題の確認・検証を行う実証運用と水素の輸送を開始する予定だ。

東芝エネルギーシステムズは福島県・浪江市に建設を進めている「福島水素エネルギー研究フィールド」を紹介した

 筆者はこのコラムの第5回第15回第53回第59回で、幾度となく燃料電池車(FCV)について取り上げてきたが、一貫しているのは、FCVの普及に対して懐疑的であるということだ。そしてその理由のかなりの部分が「いったい何から水素をつくるのか?」という疑問である。

 今回、千代田化工建設や東芝エネルギーシステムズの講演を聞いても、残念ながらその疑問が消えることはなかった。水素をメチルシクロヘキサンに変換して輸送する方式はエネルギー効率が低いという難点がある。ある試算によれば、この輸送方式では水素の持つエネルギーの半分近くが失われる。水素を高圧で圧縮して気体のまま運べばエネルギーの損失は2割程度で済むから、効率という観点からみればあまり褒められたやりかたではない。また東芝エネルギーシステムズが進めるCO2フリー水素も、天然ガスなどから製造する水素に比べると、コスト面で太刀打ちできないというのが一般的な見方である。

 もっとも、最近では太陽電池の発電コストが下がり、1Whあたり2.42セントという驚異的な低コストの例も出てきている。これは日本の一般的な家庭用電力料金のおよそ1/10の水準だ。これだけの低コストを実現するのには、もちろん様々な前提条件があり、一般論としては捉えられない。少なくとも土地コストの高い日本では無理だろう。しかし、世界の砂漠地帯などで将来、安価な太陽電池由来の電力が大量供給されるようになれば、そうした電力を利用した低コストのCO2フリー水素が実現するかもしれない。このあたりの動向は、今後も注意してウオッチしていくつもりだ。

電池コストは1万円/kWh以下に下がる?

 午後の分科会では、中国科学技術部、経済産業省、中国清華大学、日本自動車工業会、CATL、日産自動車、ホンダ、百度、トヨタ自動車が講演したのだが、筆者が注目したのは前述の通りCATLと百度の講演だ。登壇したCATL共同創業者の李平氏は、まず最近の車載用リチウムイオン電池の技術進歩とコスト低減のトレンドについて解説し、2015年に重量エネルギー密度が120Wh/kg、コストは2500元/kWh(1元=16円換算で4万円/kWh)程度だったのが、2025年には200Wh/kg、600元/kWh(同9600円/kWh)程度になるという見通しを示した。

 また、スマートフォンが従来の「ガラケー」より価格が高いにもかかわらず受け入れられているのは、その価値が消費者に認められているからだとして、EVにおいてもやみくもに安くするのではなく、「新しい消費者体験」を実現すれば高価格でも受けいれられるのではないかと主張した。