車体をアルミ化する場合、この部分は形状が複雑なので、通常は複数のプレス部品をリベットで締結して構成する。それを一体のアルミダイカスト部品に置き換えることで、コスト低減と剛性の向上が可能になるわけだ。ただし、大型のダイカスト部品を成形するのは通常の方法では難しい。融けたアルミ合金が金型の隅々まで行き渡る前に凝固してしまうからだ。そこで同社では、金型の中を負圧にする「真空ダイカスト」という技術によって、大型の部品でも隅々まで融けたアルミが行き渡るようにし、また部品の内部に「巣」と呼ばれる空洞ができないようにした。

通信技術で衝突を避ける

 もう1つユニークな技術が、車々間通信技術を利用した車両の衝突防止技術だ。既にレーダーやカメラを使った自動ブレーキ技術は普及しているが、それに対して今回の技術で面白いのは、こうしたセンサーでは防げないような衝突に通信技術で対応しようとしていることだ。

マグナが試作した実験車両。先行車両と通信することで、死角にある車両との衝突を避ける
マグナが試作した実験車両。先行車両と通信することで、死角にある車両との衝突を避ける

 例えば、先行車両が路肩に駐車しているクルマを避けようとして、急にハンドルを切って車線変更した場合を考えてみる。後ろを走っているクルマは、先行車両のために路肩に駐車しているクルマが見えず、先行車両が避けたあとにそのクルマに衝突してしまう可能性がある。

 これを避けるため、今回の通信技術を使った衝突防止技術では、先行車両が検知した停止車両の情報を、後方を走っているクルマに通信で伝える。これによって、後方のクルマが自動的にハンドルを切って、駐車している車両を避けるというものだ。この技術を実用化するには、通信システムを搭載している車両が普及しなければならないし、移動しようとしている車線に別の車両がいないかどうかを確認する必要がある。だから、なかなかすぐに実用化できる技術ではないのだが、車両単独での安全確保には限界がある部分を、通信技術によってカバーしようとする試みの一つとして注目できる。

日本のメーカーは「提案力」が課題

 これらの部品メーカーに共通するのは、完成車メーカーからの要求にこたえるだけでなく、自らが新たな技術を提案しようとする姿勢である。日本の部品メーカーはこれまで、完成車メーカーの要求に、早く、安くこたえることで成長してきた。しかし、技術開発の範囲が広がり、また市場の変化も早くなる中、完成車メーカーだけですべての技術を開発することは限界に来ている。だから、完成車メーカーからも、部品メーカーからの提案を歓迎する方向に変わってきているのだが、日本の部品メーカーは、かなり大手の企業も含めて、まだそういう期待に十分応えられる体制になっていない。

 もちろん、日本の部品メーカーもそのことは重々承知しており、まさに提案力を磨いているところだ。欧州の部品メーカーが提案型であることは以前から感じていたが、今回、米国の部品メーカーも高い「提案力」を備えていることを目の当たりにして、日本の部品メーカーも変革を急がなければならないと痛感させられた。

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