広い後方視界を確保

 加えて、後席の中央に人が座っていたり、ハッチバック車で荷物を高く積んでいたりすれば、やはり後方視界は遮られる。これに対して、ミラーをディスプレーに置き換えた場合には、車両の後方に搭載したカメラの映像をディスプレーに映し出すため、後席の乗員や荷物に邪魔されることなく後方視界が得られる。しかも、広角のカメラを使用することで、通常のルームミラーの約2倍の視野を得ることが可能だ。加えて、カメラの感度を調整することで、暗いトンネル内に入った場合でも鮮明な映像を表示するなど、ミラーではできない機能を持たせることができる。

 しかも面白いのは、ディスプレーの角度を変えることで、ディスプレーではなく、通常のミラーとしても使えることだ。ミラーとして使える機能をあえて残したのは「老眼」のドライバーへの対応である。通常のミラーでは、鏡の反射を通して後方を走る車両などを見ているため、実際に焦点が合っているのは離れた物体である。だから老眼でも問題なく確認することができるのだが、ミラーを液晶ディスプレーに置き換えてしまうと、近くにあるディスプレーの画像を見ることになる。それで焦点が合いにくくなってしまうので、あえてミラーとしても使えるようにしたのである。そして、ミラーとして機能させる場合には、自動防眩の機能を発揮する。

 ジェンテックス以外にも多くのメーカーがディスプレーミラーの開発に取り組んでいるが、自動防眩機能まで盛り込んでいるのは現在のところ同社だけだという。また、カメラに使うイメージセンサーや、液晶パネルそのものは購入品だが、カメラの組み立ては自社で行い、液晶も同社専用の仕様とし、画像処理技術も自社開発するなど、独自性にこだわっているのが特徴だ。ここは、独自のエレクトロクロミック技術を強みにしてきた同社の技術開発におけるポリシーなのだろう。

幅広い製品手がけるマグナ

 今回のプレスツアーで訪ねた3社目の部品メーカーがカナダのマグナ・インターナショナルだ。ボッシュやコンチネンタルといった欧州の大手部品メーカーに比べると、同社の名前はあまり日本では知られていないが、実は世界6位の巨大な自動車部品メーカーである(フォーイン調べ)。

 同社は、最近のメガサプライヤー(巨大自動車部品メーカー)の例に漏れず、さまざまな企業を合併することで巨大化してきた。このため、非常に手がけている商品の幅が広い。中でも特徴的なのが、完成車メーカー系列以外では世界最大の「自動車メーカー」であること。完成車メーカーからの委託を受けて、完成車の組み立てまで手がけている。例えば、独BMWの「X3」や、独ダイムラーの「Gクラス」といったSUV(多目的スポーツ車)の生産は、マグナの欧州子会社であるマグナ・シュタイヤーが担当している。

 今回はマグナが報道関係者向けに開催した「メディア・デイ」を取材したので、その幅広い製品を鳥瞰することができた。ざっと紹介しても、屋内の展示会場で大型アルミダイカスト部品、CFRP(炭素繊維強化樹脂)製部品から、多機能のシート、カメラと一体化したサイドミラー、プレス成形した変速機周りの部品、コネクテッドカー向けのサイバーセキュリティ技術などを並べる一方で、外の駐車場では、自動ブレーキを搭載したデモカーの同乗試乗などを実施した。このように、車体を構成する部品から、エレクトロニクス部品、インテリア部品までを手がける部品メーカーというのは他に例がない。世界1位のボッシュでさえ、車体の構成部品まではカバーしていないのだから。

 すべてを紹介することはできないので、興味深い展示からごく一部を紹介すると、まず目を引いたのが大型のアルミダイカスト部品だ。フロントピラーの根本をすべて一体のアルミダイカストとしたもの。展示していたのは米フォードと共同開発した試作車体だが、フロントのストラットタワー(前輪の周囲を覆う部分)もアルミダイカスト製なので、車体前部のかなりの部分がアルミ製ということになる。

フロントピラーの根本をすべてアルミ化したダイカスト部品。金型の中を負圧にする真空ダイカストという手法で成形している