ポンピング損失を抑制

 ここまでは復習だが、今回の取材で明らかになったSKYACTIV-Xの特徴はまだある。一つは、アクセル操作に対するレスポンスが向上すること、そしてもう一つは、特に低速域で燃費向上効果が高いことである。これはどちらも、従来のガソリンエンジンに比べると「ポンピング損失」を大幅に抑えられることに起因する。

SKYACTIV-Xは、従来のSKYACTIV-Gに比べて特に低速域での燃費が大幅に向上する(資料:マツダ)
SKYACTIV-Xは、従来のSKYACTIV-Gに比べて特に低速域での燃費が大幅に向上する(資料:マツダ)
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 ポンピング損失についてはこの連載の第26回でも説明しているのだが、要はスロットルバルブを閉じ気味にしたときに生じる損失のことだ。ガソリンエンジンではアクセルを踏み込むとエンジン回転数が上がって加速し、アクセルを緩めればエンジン回転数は落ちる。これはアクセルを操作する動きにともなって、吸気管の中にある「スロットルバルブ」が開いたり閉まったりするからだ。

 アクセルを踏めばスロットルバルブが開き、多くの空気がエンジンに送り込まれ、この空気の量に見合った燃料が噴射されて、高い出力を発揮する。逆にアクセルを緩めれば、エンジンに送り込まれる空気は少なくなり、噴射される燃料も減るのでエンジン出力は下がる。これがアクセルによる出力コントロールの原理だ。

 アクセルペダルの踏み方が小さく、スロットルバルブの開き方が少ない場合、エンジンは少ない隙間から空気を吸わなくてはならない。ちょうど、細いストローから思い切り息を吸い込もうとするようなもので、エンジンは空気を吸うために、余計な仕事をしなければならない。この余計な仕事が「ポンピング損失」である。

 じつはディーゼルエンジンはこの「ポンピング損失」が小さい。というのはスロットルバルブによる空気量のコントロールが必要ないからだ。ディーゼルエンジンでは、スロットルバルブによる制限なしに、エンジンは自由に空気を吸い込む。ではどうやって出力を制御するかというと、燃焼室内に噴射する燃料の量を、アクセルの踏み込み具合に応じて増やしたり減らしたりして調節するのだ。

 スロットルバルブによる抵抗がないため、ディーゼルエンジンではアクセルを踏み込むと高い応答性で加速が始まる。いわゆる「アクセルレスポンスがいい」ということだ。また、ポンピング損失はスロットルバルブが閉じ気味のときに大きい。すなわち低回転・低負荷の日常走行でよく使う領域で、ポンピング損失は大きいということだ。ディーゼルエンジンはポンピング損失が小さいので、低速域から高い燃費特性を発揮できる。

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