今回の東京モーターショーでは、この流れが国内メーカーにも1年遅れで波及し始めたと感じる。その影響を最も強く受けたのがトヨタ自動車とホンダだろう。両社ともこれまで、環境対応車としてはハイブリッド車(HEV)に力を入れ、そしてまた、次世代の環境対応車として燃料電池車(FCV)を本命視してきた。トヨタ、ホンダの、HEVおよびFCVの領域における技術力は突出しており、コスト削減技術まで含めれば、海外の完成車メーカーには追従の難しいレベルに達している。

 しかし、である。そのことがまさに、次世代の環境対応車として海外の完成車メーカーに電気自動車(EV)に力を入れさせる結果となっている面は否めない。同じ土俵で勝負しても勝ち目がないからだ。このため欧州の完成車メーカーは、HEVに対抗する環境対応車両として、ガソリンエンジン車よりも燃費を20~30%向上できるディーゼルエンジン車を有力視し、商品ラインアップを充実させてきた。しかし、独フォルクスワーゲンのディーゼル不正が露見したことで、この路線を発展させ続けることは難しくなった。

ディーゼル不正問題で会見するフォルクスワーゲンのマティアス・ミュラー社長(写真:フォルクスワーゲン)

 もっとも、フォルクスワーゲンの事件がたとえなかったとしても、ディーゼル強化路線は早晩行き詰まっていたと見られる。というのも、ディーゼル車の排ガス規制は年々強化されており、その達成のためには、高コストで複雑な排ガスの後処理装置の導入が不可欠と見られていたからだ。欧州の燃費規制(CO2排出量規制)は、企業が販売したすべての車両の平均燃費(CO2排出量)の値で基準が決まっている。この規制をパスするため、これまで欧州の完成車メーカーは、本来はガソリンエンジン車よりも高コストなディーゼル車の価格を抑えめにして、ディーゼル車の販売比率を増やすことで、燃費規制をクリアしてきたという経緯がある。

 しかし、2021年から実施される予定のCO2排出量95g/kmという基準はなんとかクリアできても、2025年以降に導入が見込まれる68~75g/kmという厳しい基準は、これまでの延長線上ではクリアできないと以前から指摘されていた。この厳しい基準をクリアするには、一定の比率でEVやプラグインハイブリッド車(PHEV)のような電動車両を導入することが不可欠と見られていたのである。フォルクスワーゲンの事件は、このシナリオのスケジュールを早めたにすぎない。EVの導入計画を予め検討していたのでなければ、フォルクスワーゲンがこれだけ早く、EVの導入を決断できたはずがないからだ。

2020年の国内販売表明したホンダ

 今回、国内メーカーで最も明確に「EVシフト」を表明したのがホンダだ。このコラムの第92回で紹介したように、フランクフルトモーターショーにも出展したEVのコンセプト車「アーバンEVコンセプト」に加えて、今回の東京モーターショーでは、世界初公開となる「スポーツEVコンセプト」を出展した。

ホンダが第45回東京モーターショーで公開したEVのコンセプトカー「スポーツEVコンセプト」(上)と、フランクフルト・モーターショーに続いて公開した「アーバンEVコンセプト」(下)

 ホンダは、アーバンEVコンセプトをベースとしたEVを、欧州で2019年に発売することをすでに表明しているが、これに続いて2020年には国内でも発売することを、今回の東京モーターショーで表明した。このモデルとは別に、ホンダは中国で2018年に中国専用のEVを発売することを表明しており、欧州、中国という近い将来EVの主戦場になりそうな市場で、ラインアップをそろえることになる。