車室の中で英語を学習

 パナソニックが創業100周年記念イベント「クロスバリューイノベーションフォーラム2018」で公開した自動運転EVのコンセプト車「スペイシー」も、狙いはシェフラーのコンセプト車と非常に似ている。パナソニック製のモーターと電池を搭載したプラットフォームの上にさまざまなモジュールを載せ替えて、無人タクシーや無人バス、移動店舗、貨物輸送などさまざまな用途に展開することを想定する。

パナソニックが試作した自動運転EVのプラットフォーム。同社製の電池やモーターを搭載する。この上に載せるモジュールを変えることで、さまざまな用途に対応できる。

 このシャシーに搭載しているモーターは、48V駆動・出力8kWのタイプで、もともとは超小型EVなどの小型EV向けに開発していたものだ。出力は低いが、このモーターを2個搭載すれば、スペイシーを時速20~40km程度で走行させることが可能だという。現在開発中の新しいモーターユニットでは、出力を18kWに高め、ユニット1個でスペイシーを駆動することが可能になるという。

 スペイシーのイメージ映像では、離島で小学校に通う子どもたちが、スペイシーで通学し、車内に設置されたディスプレイで英会話を勉強する様子が映し出されていた。パナソニックは、車両自体の製造は現在のところ考えていないようだが、シャシーに使うモーターやインバーター、電池といった駆動系の部品のほか、こうした車内でのコンテンツも供給することを考えているようだ。

 ここまで、4社の部品メーカーが移動サービス用の自動運転EVの開発に取り組む背景について紹介してきたが、こうした部品や技術を供給するメーカーが増えれば、既存の完成車メーカー以外の企業が自動運転EVの生産に参入しやすくなり、地域や利用者のニーズに合わせた多様な車両が市場に投入されることになるのではないかと筆者は考えている。

 現在はまだ部品供給までしか視野に入れていない部品メーカーでも、市場の動向によっては完成車事業にまで参入する可能性もある。これからの10年で、自動車産業における完成車メーカーと部品メーカーの関係は大きく変わっていきそうだ。

 トヨタ自動車は、2018年1月に開催された世界最大級の家電見本市「CES 2018」で、モビリティ・サービス専用の自動運転EVのコンセプト車「e-Palette Concept」を発表しました。2020年に実証実験を開始することを目指しています。日産自動車も2018年3月に自動運転EVを使ったモビリティ・サービス「Easy Ride」の実証実験を横浜・みなとみらい地区で実施しました。トヨタや日産だけではありません。いま世界の完成車メーカーはこぞって「サービス化」に突き進んでいます。それはなぜなのでしょうか。

 「EVと自動運転 クルマをどう変えるか」(岩波新書)は、当コラムの著者である技術ジャーナリストの鶴原吉郎氏が、自動車産業で「いま起こっている変化」だけでなく、流通産業や電機産業で「既に起こった変化」も踏まえて、自動車産業の将来を読み解きます。自動車産業の変化の本質はEVと自動運転が起こす「価値の革新」です。その全貌を、ぜひ書店でご確認ください。