最大の訴求ポイントは「走り」

 HEVといえば、通常は燃費の良さを一番に訴求すると考えがちだが、日産がノートe-POWERで前面に出すのは「走りの楽しさ」である。これも、他社のHEVとの差別化ポイントをどこに求めるかを考え抜いた結果である。ノートe-POWERの燃費が悪いわけではない。燃費訴求グレードのJC08燃費は37.2km/Lと、競合するアクアの37.0km/L(燃費訴求グレード)を上回る。しかし、燃費だけを取り出してみれば、トヨタでは1クラス上の車種である「プリウス」がJC08モード燃費40.8km/L(燃費訴求グレード)を達成しており、この土俵で勝負するのは得策ではない。

 それではe-POWERの走りの楽しさとは何か。その最大のものは、低速から高いトルクを生み出す、モーターならではの力強い走りだ。エンジン回転数を上げないと高いトルクが得られないエンジンと異なり、モーターには回転数ゼロで最大のトルクを生み出すことができるという特徴がある。このため、発進からの加速力はV型6気筒エンジンに匹敵するという。

 もう1つ、e-POWERの大きな魅力は、エンジン車では実現できない高い静粛性である。爆発のない滑らかな回転を実現できるモーターは、市街地を巡航しているときで、「シルフィ」や「エクストレイル」といった1クラス上の中型車種並み、発進加速時は「ティアナ」など2クラス上の高級車種並みの静粛性を実現できる。つまりノートe-POWERは大型高級車並みの加速性能と静粛性を備えたコンパクトカーということになる。

 加えてノートe-POWERは、これまでのクルマになかった新しい運転感覚を備えている。それが、アクセルだけで車両の動きを自在にコントロールできる「ワンペダル運転」が可能なことである。HEVではアクセルから足を離すと、モーターによる回生が始まることを先に説明したが、この回生の強さをコントロールすることで、e-POWERでは最大でエンジンブレーキよりも3倍以上強力な制動力を発生させることができる。

 この特性を利用することで、e-POWERではアクセルの踏み具合を調節するだけで、車両を加速させるだけでなく、減速させたり、最終的には車両を停止させたりすることができる。つまり、アクセルペダルをブレーキペダルとしても活用できるわけだ。このため本来のブレーキペダルを踏む頻度が約8割も減少するという。アクセルペダルから足を離すと急激な減速度が加わるので、違和感があるドライバーもいるかもしれないが、日産の社内評価ではほとんどの社員が、この機能を便利だと回答したという。それに、この回生の強さを一般のエンジン車並みに弱めたモードも選べるので、どうしても馴染めないドライバー向けにはこの機能を使わないという選択肢も用意されている。

当初は定時後に開発

 e-POWERのそもそもの出発点は、EVの航続距離を伸ばすレンジエクステンダー(発電専用エンジン)の開発だった。オフィシャルには、日産の本流技術はEVなので、開発を始めた当初は、限られたメンバーで、定時の後に検討をスタートしたという。

 e-POWERの特徴であるアクセルだけで自在に走りをコントロールできる機能は、当初からe-POWERの特徴と位置づけられていたようだ。発想のきっかけとなったのはEVであるリーフの部分改良モデルに「Bレンジ」という回生を強めて、アクセルを緩めたときの減速度を高くしたモードを用意したことだ。