このe-POWERの仕組みを説明する前に、そもそもHEVでなぜ燃費が向上するのかをおさらいしておこう。HEVで燃費が向上する理由はいくつかある。まず挙げられるのはアイドリングストップだ。ただしこれはHEVでなくても最近のクルマはほぼ漏れなく搭載している機能である。

 次に挙げられるのが、運動エネルギーの回生である。HEVではアクセルから足を離すと、車両の運動エネルギーを利用して駆動モーターで、バッテリーに電力を蓄える。この、車両の運動エネルギーを使って発電することを回生と呼ぶ。ブレーキを踏むと、この回生をさらに強めて、減速度を高める。従来のブレーキを使わないわけではないが、ドライバーがどの程度ブレーキペダルを強く踏んでいるかをセンサーで検知して、駆動モーターとブレーキを協調させながら、できるだけ多くのエネルギーを回収するように制御する。

 そして最後が、エンジンの熱効率の向上である。エンジンは、熱効率の高い運転領域が限られている。エンジンにかかる負荷が大きすぎても、小さすぎても、回転数が高すぎても、低すぎても、効率は低下する。ハイブリッド車では、加速時などエンジンの効率が低い領域ではモーターで駆動力を補ったり、モーターによる駆動に切り替えたりして、なるべくエンジンを熱効率の高い領域で運転するようにする。

 これまでのHEVは、ごく低速域ではモーターだけで走行する領域があるが、通常のHEVではバッテリーの容量がそれほど大きくないため、すぐにエンジンがかかり、それ以降はエンジンによる駆動力と、エンジンにより発電した電力によるモーターの駆動力を合成し、その配分をなるべく燃費が良くなるように制御しながら走行していた。

 これに対してノートe-POWERでは、駆動力をモーターだけで生み出し、エンジンは発電だけに使う。このため、エンジンを最も熱効率のいい領域で運転し、モーターを駆動して余ったぶんはバッテリーに蓄え、バッテリーがいっぱいになったらエンジンを止めてしまう。エンジンを駆動にも使う通常のHEVでは、エンジン効率が低下する領域も使わざるを得ないのに比べて、燃費の向上に有利だ。特に、エンジンの熱効率が低下する中低速域、具体的には時速80km以下で従来のHEVに比べて優れた燃費性能を発揮するという。

コスト・搭載性や高速燃費は不利

 このような優位点を備えたe-POWERだが、どうしてこれまで実用化されなかったのか。e-POWERのようなエンジンを発電だけに使うハイブリッドシステムは「シリーズハイブリッド」と呼ばれる方式で、中型車以上ではe-POWERに似たシステムを実用化した例がある。例えばホンダの「アコードハイブリッド」や、三菱自動車のプラグインハイブリッド車(PHEV)「アウトランダー PHEV」は、通常の走行領域ではエンジンを発電だけに使い、駆動力はモーターだけで生み出すシリーズハイブリッド車として走る。

 しかし、駆動力をすべてモーターで得るシリーズハイブリッドは、エンジンの駆動力も併用する従来のハイブリッドシステムに比べて大型のモーターやバッテリーが必要になるため、コストや搭載性の面で、ノートのような小型車に積むのは難しかった。具体的に比較すると、ノートe-POWERと同クラスのHEVであるトヨタ自動車の「アクア」は、最大出力45kWのモーターを積み、バッテリーの容量は0.94kWhであるのに対して、ノートe-POWERのモーターは最大出力80kWで、バッテリー容量は約1.5kWhと、モーター出力は約8割、バッテリー容量も約5割大きい。

ノートe-POWERのパワートレーン。このクラスでは大出力のモーターと大容量のバッテリーを組み合わせている

 大きなモーター、バッテリーは場所も取るしコストもかさむ。このため、スペース、コストが限定される小型車では採用しにくい。こうした困難を克服して、ノートという小型車にシリーズハイブリッドを搭載したのが、じつはe-POWERの一番大きなブレークスルーだ。