独フォルクスワーゲンが展示したEVのコンセプトカー「I.D.」。同社が2020年に商品化を予定する新型EVをイメージしたモデル

 2016年10月1日に開幕したパリモーターショーを取材してきた。そこで何回かにわたって、パリモーターショーで見た最近の自動車業界のトレンドを紹介していきたい。初回となる今回は、欧州メーカーの電気自動車(EV)への傾斜ぶりについて取り上げる。

 というのも今回のショーでは、EVを展示の目玉に据える企業が目立ったからだ。独フォルクスワーゲン(VW)を筆頭に、独ダイムラー、独オペル、仏ルノーなどが新型EVを出展の目玉に据えた。これまで欧州メーカーは、環境技術の柱にディーゼルエンジンや、ダウンサイジングガソリンエンジンを据え、ハイブリッド車に代表される電動技術を柱に据える日本とは一線を画していた。しかし、2020年以降に予想されるCO2排出量規制の強化を考えると、2020年前後からEVの普及を図らなければ対応できないとの危機感が欧州の企業にはある。

EV専用のプラットフォームを開発

 VWが今回のショーで公開したEVのコンセプトカー「I.D.」の特徴は、同社がEV専用に開発した新型プラットフォーム「MEB」を採用したことにある。VWグループは現在、横置きエンジン向けの新世代プラットフォーム「MQB」、縦置きエンジン向けの新世代プラットフォーム「MLB」を展開しつつあるが、これらとは別に、わざわざEV専用のプラットフォームを新開発したところに、VWの本気度がうかがえる。

 同社は、このコンセプトカーをベースとした量産型I.D.を2020年に商品化する計画だ。同社はI.D.をゴルフ、ポロ、ティグアン、パサートといった主力車種に匹敵する量産モデルとして展開することを目指すとしている。モーターの出力は125kWと、ほぼゴルフの量産モデルに匹敵し、航続距離は600km以上だという。さらに、価格面でも同出力のゴルフ並みを目指すというのだから、野心的な目標としか言いようがない。

 MEBで非常に興味深い点は、後輪駆動レイアウトを採用したことだ。他社のEVが、通常のエンジン車のレイアウトを踏襲し、フロントのエンジンルーム(エンジンはないのだから、モータールームと呼ぶべきかもしれないが…)内に駆動モーターを搭載する場合が多いのに対して、MEBは、左右後輪の間にモーターを搭載している。

「I.D.」のレイアウト。車室の床下にバッテリーを薄く敷き詰め、左右の後輪の間に搭載したモーターで駆動する