息を吹き返したFCV?

 電動化という点で、今回のショーでサプライズだったのが、フランスの大手自動車部品メーカーであるフォルシアが燃料電池関連技術を展示したことだ。筆者はこのコラムの第5回(FCV)や第15回(MIRAI)でも触れたように、FCV(燃料電池車)の普及には懐疑的だ。

フォルシアが開発を進める燃料電池車(FCV)技術
フォルシアが開発を進める燃料電池車(FCV)技術

 その理由は、すでに何度か書いてきていることの繰り返しになってしまうが、FCVという車両そのものよりも、燃料に水素を使うということに多くの課題があることだ。水素は天然に単体で大量に存在するものではないので、必ず他のエネルギーから作らなければならない。通常は天然ガスから作るのが最も低コストだが、製造時のエネルギー損失が大きいため、燃料製造時まで考慮したエネルギーの総合的な効率で、FCVはEV(電気自動車)に劣り、HEV(ハイブリッド車)と同程度にとどまる(日本の発電ミックスの場合)。最大の目的であるはずの環境性能で、FCVは必ずしも最良の解ではないのだ。

 しかも、水素は気体燃料なので、運ぶにも、車両に積み込むにも非常に効率が悪い。水素ステーションに水素を運ぶ際にも、車両に積み込む際にも、非常に高圧で圧縮する必要があるのでそのためのエネルギーが必要で、水素を運搬するトラックや、水素ステーションの貯蔵設備のコストも高い。

 場所もとる。車両に搭載する際には、700気圧という高圧のタンクを使用して、なるべく容積を圧縮しているのだが、それでもガソリンタンクよりもずっと大きい。しかもタンクは円筒形状にする必要があるため、どうしてもかさばってしまう。従って、同じ車両サイズのクルマ同士で比較すれば、FCVはどうしてもエンジン車よりトランクルームを狭くせざるを得ない。つまり、クルマとしての魅力もエンジン車より低いわけだ。

 このように、FCVは環境に必ずしもいいわけではなく、燃料インフラの整備にはコストがかかり、ユーザーにとっては燃料補給が不便で、車両価格が高く、トランクルームは狭く、しかも維持費の面でもメリットのないクルマということになる。つまり、消費者がわざわざFCVを買う理由が一つもない。これが、筆者がFCVの普及に懐疑的な理由である。これに比べるとEVは、燃料費(電気代)がガソリンエンジン車の1/3以下で済む、わざわざガソリンスタンドに行かなくても家で充電できる、などのユーザーメリットがある。

 これに加えて、FCVの技術では日本のトヨタ自動車とホンダが世界をリードしており、いまから追いかけるというのは技術競争の観点から見ても不利にしか見えない。そうした中、フォルシアはなぜFCV技術の開発を手がけるのか。会場にいた開発担当者にその疑問をぶつけてみた。

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