PSAがPHEVを一斉に発表

 フォルクスワーゲンという「大物」が出展しない中で気を吐いていたのが地元フランスのPSAプジョー・シトロエン・グループだ。プジョーブランドでは高級セダンの新型「508」のワゴンモデルである「508 SW」、シトロエンブランドでは上級SUVの「C5 AIRCROSS」、DSブランドでは小型SUVの「DS3 CROSSBACK」、とそれぞれのブランドに新型モデルを用意したのに加え、プジョーブランドでは508や508 SW、上級SUVの「5008」、シトロエンブランドでは「C5 AIRCROSS」、それにDSブランドでは上級SUVの「DS7 CROSSBACK」にプラグインハイブリッド車(PHEV)を設定すると発表した。

プジョー「508 SW」に設定されたプラグインハイブリッド仕様。2019年秋に発売する予定だ
プジョー「508 SW」に設定されたプラグインハイブリッド仕様。2019年秋に発売する予定だ

 これらのPHEVは、共通のパワートレーンを搭載しており、排気量1.6Lのガソリン直噴ターボエンジンに、出力80kWのモーターを組み合わせる。このハイブリッド用パワートレーンを供給するのは今回パリモーターショーに出展したアイシン精機グループのアイシン・エィ・ダブリュ(AW)で、同社の最新の前輪駆動車用8速自動変速機(AT)のトルクコンバーターを取り除き、そこにモーターと油圧多板クラッチを組み込んだもので、既存の前輪駆動車のレイアウトを大きく変えずにハイブリッド化できるのが特徴だ。

アイシングループが出展したハイブリッド変速機。8速自動変速機(AT)とモーターを組み合わせた
アイシングループが出展したハイブリッド変速機。8速自動変速機(AT)とモーターを組み合わせた

 大容量の電池を積むPHEVよりもこのシステムを使ってハイブリッド車(HEV)を仕立てたほうが、普及を考えれば有利なように感じる。なぜPSAはHEVにしなかったのか。その疑問をアイシンAWの開発担当者にぶつけると「HEVでは燃費規制に対応するのに貢献度が低いからではないか」という答えが返ってきた。確かにHEVにするだけでは、搭載する電池の容量にもよるが、通常は燃費が30%程度向上するに過ぎない。

 これに対して、今回PSAが商品化するPHEVは、1km走行当たりのCO2排出量が49g/kmと、ベース車両の121~135g/kmに対して概ね6割も少ない。欧州メーカー各社は、2021年までに企業平均燃費(CO2排出量)を95g/kmまで削減するという厳しい燃費規制の達成を迫られている。VWのディーゼル不正の影響で、ガソリンエンジン車よりも燃費のいいディーゼルエンジン車の人気が低下していることもあって、欧州の完成車メーカー各社は対応に苦慮している。PSAがPHEVの各車種を投入するのは2019年秋~2020年にかけてで、燃費規制対応が狙いであることは明白だ。

 一方で、燃費向上のための電動化技術として欧州で注目されている48V化は、今回のショーでは目立たなかった。48V化というのは、現在の通常の車種のバッテリー電圧が12Vなのに対して、これを4倍の48Vにして、小規模なハイブリッドシステムの駆動などにも使えるようにして、燃費を向上させる技術だ。日本の完成車メーカーが導入を進める本格的なハイブリッド化に対して、車両コストの上昇が抑えられることや、既存のパワートレーンの多くの部品をそのまま活用できることなどに魅力を感じ、今後欧州の完成車メーカーが多く導入すると見られている。

 例えば既にアウディの最高級車「A8」やダイムラーの「Sクラス」などが48V電源を採用済みだ。まだ採用はこうした高級車に限られているが、2019年にも全面改良が噂されているVWの次期「ゴルフ」は48V電源を搭載すると言われており、こうした大量生産車で48V電源が採用されれば量産高価で対応部品のコスト低減が進み、一気に普及が加速するだろう。

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