エンジンは2種類

 ということで、さっそく走り出したいのだが、その前に試乗車のスペックを紹介しておこう。国内市場で販売されるX2に搭載されるエンジンは、排気量1.5L・直列3気筒の直噴ガソリンターボエンジンと、排気量2.0L・直列4気筒の直噴ガソリンターボエンジンの2種類。ゆくゆくはディーゼルも追加されるだろう。

 これらのエンジンに組み合わせられる駆動系は、1.5Lエンジンが7速DCT(デュアル・クラッチ・トンランスミッション)+前輪駆動、2.0エンジンが8速AT(自動変速機)+4輪駆動である。BMWの1.5LクラスのFF車は、2シリーズ アクティブツアラーやX1、それにMINIブランドの車種も含めて従来は6速ATと組み合わされていたのだが、最近は続々と7速DCTに置き換えられている。

 その感触を試す意味でも1.5Lモデルに試乗したいと思っていたのだが、あいにく広報車両が用意されておらず、今回試乗したのは2.0Lエンジンを搭載する最上級モデルの「X2 xDrive20i M Sport X」である。車両本体価格は515万円だが、試乗車はこれに70万3000円のオプションが装備されており、合計は585万3000円だから、Cセグメントの車種といっても価格的にはDセグの輸入車セダン並みだ。

 全長がX1より80mmも切り詰められたコンパクトな車体は、より上級車種のX4やX6ほどリアウインドーの傾斜はなだらかではないが、低められたルーフや、リアピラーに向かって切れ上がっているサイドウインドー下端のライン、切り詰められたリアオーバーハングなどによってX1よりも格段にスポーティな印象になっている。BMWの象徴であるキドニー(腎臓)グリルは上下方向に薄く押しつぶされた台形になっているし、テールランプもやはり上下に薄い横長の形状で、車体をより低く、広く見せる効果を上げている。

フロントグリルの形状は幅広い台形形状(写真:BMW)
フロントグリルの形状は幅広い台形形状(写真:BMW)

 このように、全高の低いスポーティに見えるデザインでありながら、室内空間は犠牲になっていない。X1より全長は短いものの、ホイールベースはX1と同じだから足元スペースには余裕がある。また試乗車は電動ガラスサンルーフを装着していたのだが、それでもヘッドスペースは十分に確保されており、後席のヘッドルームにも不足はなかった。リアオーバーハングを切り詰めた分、荷室スペースは後席を折り畳まない状態でも470Lと、X1の505Lに比べれば小さいが、実用的にはそれほど問題ないだろう。

荷室スペースは後席を折り畳まない状態で470L。荷室の床下にはサブスペースがある(写真:BMW)
荷室スペースは後席を折り畳まない状態で470L。荷室の床下にはサブスペースがある(写真:BMW)

 走り出してみて印象的なのは、以前に試乗したX1や2シリーズ アクティブツアラーに比べると、乗り心地が改善されていることだ。相変わらず硬めのスポーティな足回りではあるのだが、段差を乗り越えたときの衝撃が身体に伝わる感じは明らかに和らげられている。一方で、ボディ剛性の高さはX1や2シリーズ アクティブツアラーと同様に、このクラスでは印象的なもので、振動はすぐに減衰する。加えて硬めのシートも、路面の衝撃を効果的に吸収してくれるので、すっきりした印象の乗り心地だ。FFプラットフォームで経験を積み重ね、セッティングがだいぶ熟成されてきたと感じる。

 動力性能は、当然のことながら十分だ。最高出力141kW、最大トルクは280N・mもあるから、アクセルを少し踏み込めば、ほとんどターボラグを感じさせず、1620kgの車体を加速させる。静粛性も高い。エンジンノイズはもちろん、状態のよい路面ではロードノイズも抑えられ、路面の形状変化に追従して滑るように走る。この走り味もSUVとしては期待以上だった。

 X2の価格は436万~515万円で、X1に比べると同等グレード同士の比較で16万~18万円高く設定されている。しかし、スタイリッシュで凝縮された印象の外観と、それでいて損なわれていない実用性、X1よりも改善された乗り心地など、それだけの価値は十分あると思った。なかなか新車では手の届きにくい価格ではあるのだが、もしX1とX2のどちらかと言われたら、筆者はX2を選ぶだろう。

 トヨタ自動車は、2018年1月に開催された世界最大級の家電見本市「CES 2018」で、モビリティ・サービス専用の自動運転EVのコンセプト車「e-Palette Concept」を発表しました。2020年に実証実験を開始することを目指しています。日産自動車も2018年3月に自動運転EVを使ったモビリティ・サービス「Easy Ride」の実証実験を横浜・みなとみらい地区で実施しました。トヨタや日産だけではありません。いま世界の完成車メーカーはこぞって「サービス化」に突き進んでいます。それはなぜなのでしょうか。

 「EVと自動運転 クルマをどう変えるか」(岩波新書)は、当コラムの著者である技術ジャーナリストの鶴原吉郎氏が、自動車産業で「いま起こっている変化」だけでなく、流通産業や電機産業で「既に起こった変化」も踏まえて、自動車産業の将来を読み解きます。自動車産業の変化の本質はEVと自動運転が起こす「価値の革新」です。その全貌を、ぜひ書店でご確認ください。

まずは会員登録(無料)

有料会員限定記事を月3本まで閲覧できるなど、
有料会員の一部サービスを利用できます。

※こちらのページで日経ビジネス電子版の「有料会員」と「登録会員(無料)」の違いも紹介しています。

※有料登録手続きをしない限り、無料で一部サービスを利用し続けられます。

春割実施中

この記事はシリーズ「クルマのうんテク」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。