これに対して、他社のEVの多くは、車体前部にモーターを置き、前輪を駆動するレイアウトである。このレイアウトでは、通常のエンジン車と同様に、車両の前方にエンジンルーム(この場合はモータールーム)を必要とする。EV専用プラットフォームを採用する日産自動車の「リーフ」や、ドイツBMWの「i3」もこの呪縛から逃れられておらず、エンジン車の発想を引きずったレイアウトといえる。

 このプラットフォームがあるからこそ、MEBプラットフォームを使うことで、I.D. conceptのようなハッチバック車から、I.D. BUZZ conceptのような小型バス、I.D. CROZZ conceptのようなSUV、ひいては、無人タクシーをイメージしたSEDRICまで、多様な車種を一つのプラットフォームから派生させることができる。これらの車種はどれも、凹凸のないフラットな床が特徴だ。VWはこのプラットフォームをVWブランドだけでなく、グループ内の幅広い車種で活用していく方針だ。逆にいえば、この柔軟性の高いプラットフォームがあるからこそ、短期間に数多くの車種を展開できるわけだ。

ダイムラーはコンパクトEVのコンセプト

 VWと同様にEVの拡充に力を入れるのがダイムラーは、2018年からEV専用の新ブランド「EQ」を立ち上げることを昨年のパリモーターショーで明らかにしており、パリモーターショーではSUV(多目的スポーツ車)のコンセプトカー「concept EQ」を公開した。これに続いて、今回のフランクフルトモーターショーではCセグメントのハッチバック車のコンセプトカー「EQA」を出展した。同社の「Aクラス」に近いサイズで、前後2基のモーターを搭載した4輪駆動車なのはconcept EQと同じだ。バッテリー容量は公開していないが、航続距離は400kmと発表されているので、40kWh以上はあるだろう。

ダイムラーが公開したEVのコンセプトカー「EQA」

 EQAの近くにはEQ用のバッテリーが展示されていたのだが、説明員によれば、これで70kWhあるということだった。日産自動車のEVである新型「リーフ」の容量40kWhのバッテリーに近いか、むしろコンパクトに見えるサイズで、電池のエネルギー密度などについても詳しく聞きたかったのだが、残念ながら教えてはもらえなかった。ただ、EQのレイアウト自体は、現在のエンジン車に近いもので、VWのI.D.のほうがEVの特性を生かしていると思う。

EQ用のバッテリー。容量は70kWhと大きい