EVに傾斜するドイツ勢
こうした中で、今回のフランクフルトショーを牽引する独フォルクスワーゲン(VW)グループ、ダイムラー、BMWグループの展示のテーマとしては、引き続き「自動化」と「電動化」が大きな比率を占めた。このうち「電動化」に取り組む姿勢を最も強くアピールしたのはVWである。

同社はまず2020年に3車種の電気自動車(EV)を発売し、2025年にはVWブランドだけで23車種のEVを発売すると発表した。VWグループは2025年に世界販売台数の1/4に当たる300万台をEVにする目標を掲げており、そのうち、半分の150万台は中国で販売する計画だ。グループ全体では2025年までに50車種のEVと、30車種のプラグインハイブリッド車(PHEV)を投入する。この先触れとして、このコラムの第67回で紹介したように、VWはEV専用のプラットフォーム「MEB」を開発、2016年のパリモーターショーではこのMEBを使った小型ハッチバック車のコンセプトカー「I.D.」を発表した。
その後、2017年1月のデトロイトモーターショーで、MEBを使った小型バスのコンセプト車「I.D. Buzz concept」を、3月のジュネーブモーターショーではMEBをベースにした完全自動運転車「SEDRIC」を、さらに4月の上海モーターショーではSUVのコンセプトカー「I.D. CROZZ concept」を出展するなど、2020年以降に商品化するモデルをイメージさせるコンセプトカーを次々に公開してきた。
今回のフランクフルトモーターショーでは、I.D. CROZZの内外装のデザインを改良した「I.D. CROZZ 2」を出展した。I.D. CROZZをベースとした市販車は2020年にVWが発売する予定のEV3車種のうちの1車種になると見られており、今回の改良は、より商品化を意識した内外装のデザインの改良が主な変更ポイントだ。

こうした一連の動きを見て筆者が思うのは、VWが非常に周到にEV化を進めていることだ。それが大きく現れているのがMEBの構造である。MEBの最大の特徴は、このコラムの第67回でも紹介したように、モーターを車体後部に搭載した後輪駆動を基本としていることだ。I.D. CROZZ2は車体前部にもモーターを搭載して4輪駆動とした仕様のMEBを採用するが、基本は後輪駆動仕様である。
リアにモーターを搭載した最大のメリットは、車両レイアウトの自由度が増すことだ。後輪駆動仕様のMEBでは、フロント周りには操舵装置や充電コントローラくらいしかない。客室の床下にはバッテリーが敷き詰められ、そして左右の後輪の間にはモーターが薄くレイアウトされている。つまり、車体の全長にわたって、フロアをかなり平坦にすることが可能だ。大げさにいえば、後輪駆動のMEBは、厚みのある板の四隅にタイヤを配置したような形状のプラットフォームだということができる。これがリアエンジンのクルマだと、リアのフロアをモーターほど低くすることができないから、このレイアウトは、エンジン車では不可能な、EVの特徴を生かしたレイアウトだということができる。

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