これに対し、新型インプレッサでは、バンパーの裏にシリコーン樹脂という耐久性の高い樹脂でできた細いホースを配置した。ホースの中には空気が満たされていて、もしフロントバンパーが歩行者にぶつかって凹むと、その裏側に配置したホースがつぶれ、ホース内部の圧力が上昇する。この圧力変化を、ホースの端部に取り付けた圧力センサーで検知して、エアバッグを作動させる仕組みである。センサーの数を1個で済ませてコストの上昇を抑える一方で、バンパーのどこに歩行者がぶつかっても検知できるように工夫したもので、この構造は世界初だ。

 コストを抑える工夫はバッグそのものにもある。ボルボのV40では、歩行者用エアバッグが開くときにボンネットの後方が持ち上がって、バッグが開くための隙間を作る。これは、ボンネットとエンジンの間の隙間を増やして、歩行者とボンネットが衝突したときに衝撃を吸収するための空間を確保する効果もある。反面、構造が複雑になってコストが上昇する。

 これに対して、スバル車はすべて水平対向エンジンという背の低いエンジンを採用していて、持ち上がるボンネットを採用しなくても、もともと衝撃を吸収する空間の確保に有利だ。なので、新型インプレッサでは、ボンネットの後方を持ち上げずに歩行者用エアバッグを膨らませる構造を採用した。ボンネットとフロントウインドーの小さな隙間からエアバッグを膨らませるのには苦労したようだ。

質感は大幅に向上したが…

 新型インプレッサは、全長で45mm長くなっていて、そのうち25mmをホイールベースの延長に充て、後席の足許スペースを拡大しているほか、15mmをフロントオーバーハングの延長に、5mmをリアオーバーハングの延長に充てている。しかし外観を見ると、15mmという数字以上にボンネットが長く、低くなった印象を受ける。車両の後方は角が丸められて、斜めから見ると車体の後方が短くなった印象を与えるので、なおさらボンネットの長さが際立つ。このため多くの人が「格好良くなった」という印象を受けるだろうと思う。

 一方で、室内に乗り込んでみると、質感の大幅な向上も印象的だ。これもこのクラスでは珍しいステッチ(縫い目)の付いたインストルメントパネルや、光沢のある黒いセンターパネルなどがそういう印象を与えるのに加え、通常の全面改良では他車種や従来車種から流用することの多いスイッチ類も、新型インプレッサからほとんどが新設計となっており、これらの積み重ねが欧州車にも負けない高い質感につながっていると思う。

新型インプレッサのインストルメントパネル。ステッチ(縫い目)や光沢のある黒いセンターパネルなどが質感の向上を印象付ける
新型インプレッサのインストルメントパネル。ステッチ(縫い目)や光沢のある黒いセンターパネルなどが質感の向上を印象付ける

 デザイン自体も、初めて運転席に座っても戸惑うことの少ない分かりやすいデザインだが、そのことは同時に、新鮮味に欠けるということでもある。海外、特に欧州の自動車メーカーでは、クルマの情報化や自動運転の時代に向け、インパネの新しいデザインがどうあるべきかについて、新しい提案を始めている。せっかくプラットフォームから一新したのだから、コックピットのあり方についても、スバルならでは新しい提案が欲しかったというのはないものねだりだろうか。もっとも、見た目の新しさよりも、愚直に使いやすさを追求するマジメで堅実なところが、まさにスバリストの求めるスバルらしさ、ということなのかもしれないが。

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ウェビナー開催、「なぜ世界はEVを選ぶのか」(全2回)

 日経ビジネスLIVEでは2人の専門家が世界のEV事情を解説するウェビナーシリーズ(全2回)を開催します。

 9月30日(金)19時からの第1回のテーマは「2035年、世界の新車6割がEVに 日本が『後進国』にならない条件」。10月14日(金)19時からの第2回のテーマは「欧州電池スタートアップのCTOが現地報告、巨大市場争奪の最前線」です。各ウェビナーでは視聴者の皆様からの質問をお受けし、モデレーターも交えて議論を深めていきます。ぜひ、ご参加ください。


■第1回:9月30日(金)19:00~20:00(予定)
テーマ:2035年、世界の新車6割がEVに 日本が「後進国」にならない条件
講師:ボストン コンサルティング グループ(BCG)マネージング・ディレクター&パートナー滝澤琢氏

■第2回:10月14日(金)19:00~20:00(予定)
テーマ:欧州電池スタートアップのCTOが現地報告、巨大市場争奪の最前線
講師:フレイル・バッテリー(ノルウェー)CTO(最高技術責任者)川口竜太氏


会場:Zoomを使ったオンラインセミナー(原則ライブ配信)
主催:日経ビジネス
受講料:日経ビジネス電子版の有料会員のみ無料となります(いずれも事前登録制、先着順)。

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