製造ラインを一挙に3倍に

 次に、鈴鹿から浜松に移動し、オデッセイハイブリッドから搭載を始めた中型車用の新型モーターの製造ラインを見学した。この新型モーターは、その後アコードハイブリッドにも搭載を広げており、中型車用モーターは事実上、この新型モーターに一本化された。新型モーターの最大の特徴は、従来のようにステーターのティースと呼ばれる突起に銅線を巻いていくのではなく、分割した銅線をティースとティースの間に差し込んでいき、最後に差し込んだ銅線同士をスポット溶接することによって1本の銅線にするという製造工程を採用したことにある。

ステーターに巻線をするのではなく、分割した太い銅線を差し込み、最後に溶接してつなげるという製造方法を採用したのが特徴
ステーターに巻線をするのではなく、分割した太い銅線を差し込み、最後に溶接してつなげるという製造方法を採用したのが特徴
[画像のクリックで拡大表示]

 この手法を採用することで、ティースとティースの間の断面積に占める銅線の断面積の比率(占積率)を、従来の47%から60%に高めることができ、モーターを23%小型・軽量化しつつ、出力、トルクを高めることに成功した。

 一方、生産面での大きな変化は、従来のアコードハイブリッド用のモーターが外部からの購入だったのに対して、オデッセイハイブリッド用のモーターはホンダの内製に切り替えたことだ。アコードハイブリッドは、2013年6月の全面改良で国内はハイブリッド仕様に一本化されたのだが、発売当初は月間の販売台数が1000台を超えたことがあったものの、ここ1年は数百台レベルで推移している。これに対して、2016年2月に発売されたオデッセイハイブリッドは、オデッセイの販売台数全体の7~8割を占めている。オデッセイの販売台数自体は、概ね3000~5000台で推移しており、この8割とすれば2400~4000台となって、アコードハイブリッドとは一桁違う販売台数である。

 しかも、2016年5月にはアコードハイブリッドを大幅に部分改良して、オデッセイハイブリッドと同じタイプのモーターに切り替えたほか、今後もこのモーターを積む車種を拡大する方向にあることから、ホンダは内製化に踏み切ったようだ。新型モーターは2015年11月に、浜松市にある同社のトランスミッション製造部の製造ラインで量産を始めたのだが、2016年7月には、同じ建屋内で2本目の製造ラインが稼働、さらに11月には3本目の製造ラインを稼働させるなど、急ピッチで生産能力の増強を進めている。

 今回報道関係者向けに公開されたのは、最初に稼働した製造ラインだ。こちらは、さきほど見学した小型車用のモーターの製造ラインと比べて非常に規模が大きい。これは、分割した巻線を曲げ加工するラインや、その曲げ加工した分割巻線をまとめてステーターコアに挿入する工程、挿入した分割巻線を溶接する工程、溶接を終了した巻線にコーティングをする工程など、様々な工程があるからだ。

オデッセイハイブリッドから採用を初めた中型車用新型モーターの製造ライン。小型車用モーターの製造ラインに比べてかなり規模が大きい
オデッセイハイブリッドから採用を初めた中型車用新型モーターの製造ライン。小型車用モーターの製造ラインに比べてかなり規模が大きい

 今回は製造ラインを見学できなかったが、中型車用の新型モーターを生産する浜松のトランスミッション製造部では、8月25日に国内でも受注を開始した新型「NSX」用の高級スポーツカー向けモーターも製造している。海外の自動車部品メーカーでは、電動車両向けのモーターの製造をメガサプライヤーに任せているところも多い。そうした中で、エンジンにこだわりを見せてきたホンダは、モーターの開発だけでなく、その製造ラインの開発にも子会社のホンダエンジニアリングと共同で取り組むなど、エンジンと同様のこだわりを見せている。その熱意の一端を垣間みることのできた今回の取材だった。

まずは会員登録(無料)

有料会員限定記事を月3本まで閲覧できるなど、
有料会員の一部サービスを利用できます。

※こちらのページで日経ビジネス電子版の「有料会員」と「登録会員(無料)」の違いも紹介しています。

※有料登録手続きをしない限り、無料で一部サービスを利用し続けられます。

この記事はシリーズ「クルマのうんテク」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。