時代は「ソリッドステート」へ 

 ただし現在のスカラでも、さらにコンパクトにして欲しいという要求は強い。バンパーやドアに内蔵すると、前方や側方に別の車両がいる場合、レーザー光が遮られ、遠方までレーザー光が届かなくなってしまう。本当はライダーは、屋根の上などできるだけ高いところに置いて、遠くまでレーザー光が届くようにしたいのだ。外観になるべく影響しないようにしようとすれば、例えば屋根の四隅に配置することが考えられるが、そのためにはセンサーをかなり小型化する必要がある。現在のスカラでも大きすぎるのだ。

 現在のスカラは、内部にモーターで回転させる鏡を内蔵していて、この鏡でレーザー光の方向を変え、広い範囲に照射する仕組みになっている。しかし、こういうメカニカルな仕組みでは小型化に限界があり、低コスト化や、振動などに対する耐久性でも不利だ。このため、次世代のライダーでは、こうしたメカニカルな部分を極力小さくしたり、あるいはなくしてしまったりする「ソリッドステート化」の試みが加速している。

コンチネンタル社がASCの技術を使って開発しているライダー(写真:コンチネンタル)

 例えば、今回ZFが出資したイベオも「ソリッドステート技術の活用による回転鏡のない新世代のライダーをZFと共同で開発する」(ZFのニュースリリース)としている。どのような技術を使うのか、詳細はまだ分からないが、より小型で低コストなタイプの実現を目指していることは間違いない。

 ZFに先立って、世界4位のメガサプライヤーであるコンチネンタルも、2015年3月に米アドバンスト・サイエンティフィック・コンセプツ(ASC)からソリッドステート型のライダー技術を買収している。一方で、世界最大のメガサプライヤーであるボッシュは、ライダーの自社開発に取り組んでいる。半導体製造技術を使った微小機械である「MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)」を応用した微小な鏡を使ったタイプと見られている。同社はMEMSを使った加速度センサーを量産しており、この技術を応用するようだ。

 実はイベオはもともと、フランスのメガサプライヤーであるヴァレオと関係が深い。冒頭で紹介したイベオの「スカラ」も、ヴァレオと共同開発したものだ。ZFは、そのイベオを横からさらっていった格好になる。その点で、今後ヴァレオとZFの関係がどうなっていくのかも注目点だ。

日本でも参入の動き

 日本でも、新しいタイプのライダーを量産しようという動きが出ている。例えばパイオニアは、ボッシュと同様にMEMSを使ったライダーで、自動車用センサーに参入しようとしている。同社はHUD(ヘッドアップディスプレイ)でMEMSを使っており、この技術を応用する。同社はセンサーだけでなく、カー・ナビゲーション・システムで培った地図技術を生かし、自動運転用の3次元地図分野でも、データ量を抑えた新たな地図のフォーマットを提案しており、2016年6月に「自動運転事業開発部」を新たに発足させた。

パイオニアが開発中のライダーのモックアップ(写真:パイオニア)

 自動運転の世界では、米アップルが自動車事業への参入を狙っているといわれるほか、米グーグルも自動運転車の開発に力を入れている。こうした完成車の分野だけでなく、部品の世界でも、新技術をテコに参入するベンチャー企業は多い。今後は、車内で使うアプリケーションやサービスなどで参入する企業も増えるだろう。様々な分野で、これまでの自動車の枠を超えた新しい技術やビジネスが多く創造されていく可能性がある。日本の自動車産業がこれからも世界の市場で勝ち抜いていくためには、こうした新しい動きにも、遅れずに対応していく必要がありそうだ。