1つは、車両の現在位置を知るためだ。高速道路での自動運転は、先ほど紹介した日産や富士重工の例でも分かるように、カメラによって車線を認識する技術をベースに実現している。ところが一般道路では、現在位置の把握が格段に難しくなる。一般道路では車線が消えかかっているところや、交差点のように途切れているところもあり、車線だけを頼りに自分の車両の位置を決めることは難しい。さらに言えば一般道路では、建物の影に隠れて、GPS(全地球測位システム)信号を受信できないような状況も増える。

 このため一般道路を自動走行するためには、建物やガードレールなど道路周囲の物体の形状まで織り込んだ「3次元地図」がどうしても必要になる。ライダーで周囲の建物や中央分離帯、街灯などの形状を検知しながら、その形状を3次元地図と照らしあわせることで、自車両が3次元地図上でいまどこにいるのかを把握するためだ。

 もう1つ、ライダーが必須な理由が、周囲の物体との正確な距離測定である。一般道路では、狭い場所の通り抜けなど、周囲の物体との距離を正確に測りながら走行しなければならない状況が頻繁にある。現在、数cm単位で周囲の物体との距離を測定できる車載センサーはライダーしかない(正確にいえば、超音波センサーもあるのだが、検知距離が数mと短く、自動運転用としては性能が不十分だ)。車両の現在位置を把握することと、障害物との距離測定という2つの意味で、ライダーは一般道路での自動走行において必須とされている。

クルマに搭載できるライダーがない

 このように、将来の一般道路での自動運転で必須になると見られているライダー。しかし問題は、まだ一般車両に搭載するライダーで「決定版」がないことだ。先ほども触れたように、現在自動運転の実験車両で使われているLiDARは安くても約80万円という高価なものだ。これをそのまま市販車に搭載するわけにはいかない。

 市販車に搭載するためには、センサーを100ドル程度まで低コスト化することが1つの目標になっている。これは、現状よりもコストを1/100近くに下げるということを意味する。達成には画期的な技術が必要だ。ZFがイベオに40%出資するという冒頭のニュースは、まさにこういう文脈の中で報じられた。

 イベオはこの記事の最初で写真を紹介した「スカラ」という比較的小型・低コストのライダーを開発しており、ZFはこうしたイベオの技術を手に入れるために出資したと見られる。スカラは、先ほど紹介したホンダの自動運転の実験車両でも、ベロダインのライダーと共に搭載されている。イベオのライダーの価格については不明な点が多いのだが、商品化される際には1000ドル以下に設定されるようだから、大幅なコスト減といえる。ただし、1台で周囲360度をセンシングできるベロダインのライダーと違い、スカラはクルマの周囲を監視するのに4台程度必要なのでその分コストがかさむという面はある。

 コスト減に加え、スカラの特徴はクルマのデザインに溶け込みやすいことである。1台で360度を監視できるベロダインのライダーは、車両周囲の物体の認識という点では好都合だが、屋根の上に搭載しなければならないので、自家用車への搭載ということを考えると、デザイン面では好ましくない。この点、スカラはバンパーやドアに埋め込むことで、外観にあまり影響を与えずに搭載することが可能だ。

トヨタ自動車が伊勢志摩サミットで公開した一般道路を走行可能な自動運転の実験車両。屋根の後ろが、センサーを収納するために膨らんでいる(写真:トヨタ自動車)