周囲の物体を精密に把握

 現在、自動ブレーキや車線維持支援などのADASに使うセンサーの主流は、前回のこのコラムでも触れたようにミリ波レーダーとカメラである。ではなぜライダーがそんなに重要なのか。それは、今後実用化すると見られる「市街地での自動運転」で、ライダーが不可欠のセンサーと考えられているからだ。

 実はライダーも一部の低コストな自動ブレーキには既に使われている。しかしこれは前方に物体があるかどうか、物体までの距離はどの程度かは分かるが、位置や形状までは正確には分からない簡易的な機能のものだ。これに対して、現在実用化に向けて開発が進められているライダーは、物体までの距離だけでなく、その物体がどこにあるのか、その物体がどんな形状をしているのか、ということまで検知できるより高性能なLiDARだ。その代表的なものが、米グーグルや完成車メーカー各社が自動運転の実験車両に使用している米ベロダインのライダーだ。

ベロダインのライダーを搭載したホンダの自動運転実験車両。ホンダはライダーを「3次元レンジファインダ」と呼んでいる。周囲の物体を捉えるために、ライダーのほか、ミリ波レーダーやカメラを搭載している(写真:ホンダ)

 ベロダインのライダーは、実験車両の屋根の上に載せて使う。ちょうど、昔のパトカーの屋根の上に載っていた回転灯のように、本体がぐるぐると回転して、周囲360度にレーザー光を発射し、車両周囲のどこに物体があるか、物体までの距離はどの程度か、に加えて物体の形状もかなり把握できる。

 ただし、ベロダインのライダーは物体の形状までかなり細かく把握できる高性能なものだが価格も高い。最も高性能なタイプで、7万5000ドル(1ドル=101円換算で757万5000円)、性能を落として低価格化を図った最も低価格なタイプでも8000ドル(同80万8000円)といわれており、とても市販車に取り付けられる値段ではない。

 実は、高速道路の自動運転だけなら、ライダーは必ずしも必須ではない。前回のこのコラムで紹介したように、高速道路の、単一レーンの自動運転技術「プロパイロット1.0」を新型セレナに搭載して8月下旬に商品化すると発表した日産自動車は、単眼カメラだけでその機能を実現している。

 2020年に高速道路での進路変更も含めた自動運転技術を実用化することを計画している富士重工業は、現行の「アイサイト(ver.3)」で使っているステレオカメラに加え、クルマの四隅に低コストなミリ波レーダーを組み合わせることで実現する方針だ。車線を維持して走行する機能は主にステレオカメラで担い、車線変更の際に、後ろから接近してくるクルマはないか、これから移ろうとする車線にクルマはいないかをミリ波レーダーで確認するという役割分担である。これなら現行のアイサイトとそう変わらないコストで実現できるはずだ。

市街地走行には不可欠

 ではなぜ今、ライダーの開発で巨大な部品メーカーがしのぎを削っているのか。それは、高速道路での自動運転の先に控えている一般道路での自動運転をにらんでいるからだ。高速道路では必要なかったライダーが、一般道路で必要になる理由は2つある。