これを、従来の運転支援システムの中では最も自動化が進んでいたテスラのオートパイロットと比較してみよう。一番大きな違いは、テスラが手放し運転が可能だったのに対し、日産のプロパイロットではできないことだ。日産のシステムでは、ステアリングに軽く手を添えている必要があり、10秒以上離しているとシステムが解除されてしまう。また、テスラでは停車からの再発進時にドライバーの操作が不要だが、日産のシステムでは必要だ。テスラのように、ウインカーを出すと自動的にクルマが進路変更してくれる機能も備えていない。

 このように、テスラに比べると日産のシステムの「自動化度」は低く、そのぶん未来感も薄いのだが、一方でこのシステムがあくまでも運転支援システムであり、自動運転システムではないことをドライバーに意識させる効果はあるだろう。ドライバーがシステムに過度に依存しないように配慮した結果だといえる。

 次に日本の完成車メーカーの運転支援システムである富士重工業の「アイサイト(ver.3)」との比較してみよう。アイサイトも、高速道路で車線の中央を走るようにステアリング操作を支援する機能を備えているのだが、アイサイトではステアリング支援をしてくれるのは時速65km以上であるのに対して、日産のプロパイロットでは渋滞走行時を含む全車速で、ステアリング操作をしてくれる点が異なる。渋滞時のステアリング、アクセル、ブレーキのすべての操作を自動化したのは日本の完成車メーカーで初だという。この点で、国内メーカーの運転支援システムの中では、最も「自動化度」が高いシステムといえるだろう。

現実的な進化

 日産が当初、2014年に「単一レーンでの自動運転を2016年に実現する」と発表したときには、当然ステアリングからの手放しが可能で、しかもナビゲーションシステム上で目的地を設定すれば、そこまで自動的に走ってくれるようなシステムをイメージしていたのだが、実際に登場したシステムは、それよりもずっと現実的なものだった。自動運転技術、という名称は付いているが、実態としては、アダプティブ・クルーズ・コントロールの進化系と考えたほうが正しいだろう。

 このように、極めて現実的にでき上がっているプロパイロット1.0だが、いささかの疑問は、このシステムに「自動運転技術」という名称を使ったことである。これは日産のプレスリリースにもはっきり書いてあるし、日産のホームページにおける新型「セレナ」のPRページでも「同一車線自動運転技術」と紹介されているのでこの記事でもそう表現してきたのだが、実際には同社の技術担当役員も、プロパイロット1.0の発表の席で「これは運転支援システムです」と言っている。なぜこんなややこしいことになるのか。

 同社では2014年7月にカルロス・ゴーン社長が「我々は2016年末までに、当社の自動運転戦略のもと、2つの次世代テクノロジーを実用化する予定です。まず、混雑した高速道路上で安全な自動運転を可能にする技術、トラフィック・ジャム・パイロットを市場に投入します。更にほぼ同時期に、運転操作が不要な自動駐車システムも幅広いモデルに投入する予定です」と表明しており、ここで「自動運転」という表現を使っていることから、今回プロパイロットを市場投入するに際しても、この表現を使わざるを得なかったのだろう、というのが筆者の推測だ。

 自動運転という言葉には様々な捉え方が存在し、人によっても捉え方が異なる。NHTSA(米国運輸省道路交通安全局)の定義では、今回のプロパイロット1.0はレベル2(ドライバーが安全運行の責任を持つが、操舵・制動・加速全ての運転支援を行う段階。完全自動運転はレベル4)の自動運転ということになり、その意味で日産がこのシステムを自動運転技術と呼ぶのは間違いではない。

 しかし、自動運転にあまり予備知識のない一般の消費者は、自動運転にこんなレベルの違いがあることなど知らないだろう。だから他の完成車メーカーは「自動運転」という言い方を慎重に避けているのだが、そうした中で日産があえて「自動運転」という言葉を商品に使ったのは、単眼カメラだけでシステムを構成したのと並ぶ大胆な決断といえる。実際のシステムの設計にはドライバーが過度に依存しないように細心の注意が払われているのは、すでに説明した通りだが、この大胆な決断が消費者にどのように受け止められるのかを、今後も注意深く見ていきたい。