モービルアイは「EyeQ」と呼ぶ運転支援システム用の画像処理半導体を開発する企業で、これまでも日産はモービルアイの半導体を使ってきた。例えば日産は既にモービルアイの画像処理半導体を使い、単眼カメラだけで歩行者認識を含む自動ブレーキ機能「エマージェンシーブレーキ」や、車線維持支援機能などを商品化している。

 モービルアイが、単眼カメラでどのような手法を使って物体との距離を測っているのか、その詳細は企業機密なのだが、基本的な原理は「消点収束」を活用するというものだ。広大な平原で、地平線の彼方に伸びる直線道路を想像していただきたい。道路は、水平方向の無限遠に向かって1点に収束するはずだ。これが消点(道路が消える点)収束である。そこよりも手前にある物体を見るには、水平よりも下に視点を下げる必要がある。具体的には、先行車両のタイヤが地面と接している点が、水平よりもどのくらい下の位置に見えているかが分かれば、原理的には先行車両との距離が分かるはずだ。

 もちろん上り坂や下り坂ではこの角度が狂うし、カーブでもこの手法がそのまま使えるわけではない。しかし、上り坂や下り坂の角度をセンサーで検知して補正したり、カーブにおいて道路の幅がどのくらい狭くなっているかを検知したりすることで、距離を推定することはできる。基本原理をベースに、様々な修正手法を組み合わせることで、モービルアイの画像処理半導体は物体との距離測定を可能にしていると推定されている。

 もちろんモービルアイの画像処理半導体は物体との距離を測るだけではなく、その物体が何であるかを判定する機能も備えている。日産が新型セレナに搭載するのは、モービルアイの画像処理半導体の最新版である「EyeQ3」というタイプで、その前の世代の「EyeQ2」の約6 倍の画像処理性能を実現している。従来のQ2が30万画素程度のカメラの画像処理に使われていたのに対し、新型セレナでは約130万画素という非常に画素の多いカメラの使用を可能にした。画素数が増えれば、そのぶん遠方の物体との距離を正確に推定することが可能になる。

運転支援システムであることを強調

 前回のこのコラムで紹介したテスラ・モーターズの「モデルS」は、単眼カメラの画像処理にモービルアイのQ2を使っており、これにミリ波レーダーを組み合わせて運転支援システムを構成していた。今回日産は、画像処理半導体の性能を上げることで、単眼カメラ単独で、テスラのオートパイロットに近い運転支援機能を実現したといえる(テスラのオートパイロットの機能に関してはこのコラムの第46回を参照いただきたい)。

 テスラのオートパイロットに近い、と表現したが、今回日産が新型セレナに搭載するプロパイロット1.0で実現している機能は、①渋滞走行、②単一レーンでの高速巡航走行、の2つのシーンでステアリング、ブレーキ、アクセルのすべてを自動的に操作するというものだ。巡航走行では、ドライバーが設定した車速(約30~100km/h)内で、先行車両との車間距離を一定に保つよう制御することに加え、車線中央を走行するようにステアリング操作を支援する。

 一方、渋滞走行では、①先行車両が停車した場合にシステムが自動的にブレーキをかけて停車。②車両が完全に停止した場合、ドライバーはブレーキを踏むことなく、停止状態を保持。③先行車両が発進した際は、ドライバーがレジュームスイッチを押すかアクセルペダルを軽く踏むと追従走行を再開(停車時間が3秒以内であれば、ドライバーがなにもしなくても再発進)――という機能を備える。

プロパイロット1.0の機能