日産が単眼カメラだけでシステムを構成したのは低コスト化のためだ。これから日産は、幅広い車種にプロパイロット1.0を展開する計画であり、普及価格帯のクルマに展開するにも、低コスト化は不可欠だ。日産はまだプロパイロット1.0の価格を発表していないが、新型セレナでは搭載車種を300万円以下に設定するとしており、現行型セレナの売れ筋価格帯が250~280万円であることを考えると、実質的な価格は20万円以下に設定されそうだ。

コストだけではないメリット

 単眼カメラだけでシステムを実現したメリットはコストだけではない。例えば、プロパイロットに近い機能を実現した運転支援システムには、前回のこのコラムで紹介した米テスラ・モーターズの「オートパイロット」や、富士重工業の「アイサイト(ver.3)」などがあるが、オートパイロットは単眼カメラにミリ波レーダーを組み合わせたシステムだし、アイサイトは2つのカメラで構成するステレオカメラを使ったシステムである。いずれも、複数のセンサーを組み合わせているのだ。

 まずミリ波レーダーと単眼カメラの組み合わせを考えると、単眼カメラは通常フロントウインドーの室内側、ルームミラーの裏側あたりに取り付ける。一方で、ミリ波レーダーは、寸法が大きいためにフロントウインドーの内側に取り付けることはできず、通常はフロントグリルの裏側に取り付けることが多い。しかし、小型車などではフロントグリルの裏に取り付けられたラジエーターとの隙間を確保するのが難しい場合がある。

 例えば、トヨタ自動車の運転支援システムには、単眼カメラとレーザーレーダーを組み合わせた小型車向けの「Toyota Safety Sense C」と、単眼カメラとミリ波レーダーを組み合わせた中型・上級車向けの「Toyota Safety Sense P」があるのだが、2種類のシステムを用意した理由の1つとして、トヨタは、小型車ではミリ波レーダーの取り付けスペースの確保が難しいことを挙げている。日産のように、システムを単眼カメラで構成できれば、ミリ波レーダーの取り付け位置を確保する必要がなくなり、小型車から上級車まで幅広い車種を同じシステムでカバーできる。

 一方、ステレオカメラとすると、ミリ波レーダーの取り付けスペースが必要ないというメリットは同じだが、より室内側の取り付けスペースを小さくできるのが優位点だ。ステレオカメラは、物体の画像をとらえるだけでなく、ちょうど人間の眼のように2つのカメラを配置することで、三角測量の原理で物体までの距離も測ることができるのが特徴だ。ただしそのためには、2つのカメラをある程度距離を離して配置することが必要で、ルームミラーの裏側に配置した場合に、フロントウインドー上部でかなりの面積を占めることになる。このため、信号を見上げた場合など、視野を遮ることもある。この点、単眼カメラなら、カメラが1つだけなので、カメラ自体の寸法を小さくでき、視野を遮る範囲を小さくできる。

新型セレナのフロントウインドーの室内側に取り付けられた単眼カメラ

モービルアイの半導体を使用

 ただし単眼カメラを使ううえでの問題は、距離をどう測るかである。ミリ波レーダーは前回のこのコラムで説明したように、電波を使って物体との距離を直接測るセンサーである。これに対して、カメラは画像をとらえるだけなので、直接距離を測ることはできない。例えば先ほど出てきたステレオカメラは、左右のカメラでとらえた画像の違いから、三角測量の原理で、物体の距離を割り出す。これに対して、日産のシステムでは単眼カメラで物体との距離を測定するのが大きな特徴である。この単眼カメラで物体との距離を測定するのに日産が使っているのがイスラエル・モービルアイの画像処理半導体だ。