大幅な部分改良を受けて近く発売予定の新型「アウトランダーPHEV」。外観ではヘッドランプやグリル、バンパーの形状が変更された(写真:三菱自動車工業)
大幅な部分改良を受けて近く発売予定の新型「アウトランダーPHEV」。外観ではヘッドランプやグリル、バンパーの形状が変更された(写真:三菱自動車工業)

 前回のこのコラムで取り上げたマツダの新型「アテンザ」もそうだが、このところ、モデル途中で従来の部分改良の域を超えた大幅な部分改良をする例が目立つ。このコラムの第79回で取り上げたトヨタ自動車の新型「ヴィッツ」もその範疇だろう。大幅な部分改良をするようになった背景には、クルマのモデルライフが伸びていることがまずある。つまり、長いライフサイクルで商品価値を保つため、また販売面でのテコ入れの意味もあって、大幅な部分改良を実施する例が増えているのだ。

 かつて国産車のモデルサイクルはほぼ4年だった。つまり4年に1度フルモデルチェンジをしていたということだ。当時から欧州車のモデルサイクルは6~8年くらいあったから、国産車のモデルチェンジのサイクルはずいぶん短く感じたものだ。モデルチェンジサイクルの短さが社会的問題として取り上げられたことさえある。

 1978年1月5日、当時の衆議院議員の柴田睦夫氏は国会質問で「自動車生産台数世界第二位の地位を占める我が国では、世界の自動車先進諸国のこうしたすう勢と逆行するモデル・チェンジがひん繁に繰り返され、欠陥車問題が今日なお、随所で問題化している。主務官庁たる運輸、通産両省とも、欠陥車問題解決のための有効な対策、措置を積極的に講じようとしていないだけでなく、消費者に過重な負担を強い、資源浪費につながるひん繁なモデル・チェンジを事実上黙認しているのである…」と、品質欠陥を放置しながらのひんぱんなモデルチェンジをやり玉に挙げている。

伸びた国産車のモデルチェンジサイクル 

 当時の柴田議員が現在の状況を見たらきっと満足するだろう。最近の国産車では、きっちり4年毎にモデルチェンジをしているのは軽自動車の売れ筋車種に限られ、ほとんどの車種でモデルチェンジサイクルは6年程度に伸びている。8年程度のクルマも珍しくない。トヨタの「エスティマ」や「プレミオ/アリオン」のように大幅な部分改良を受けながら10年以上にわたってフルモデルチェンジしていない車種もある。三菱自動車の「パジェロ」や「デリカD:5」も現行モデルは10年選手だ。

 国産車でモデルチェンジサイクルが伸びている最大の理由は市場の縮小だろう。国内の自動車市場は1990年の778万台をピークに下降傾向にあり、特にリーマン・ショック後の2008年以降はゆるやかな上下を繰り返しながらも500万台程度で推移している。販売台数が少なくなれば、新型車の開発費を回収するのに時間がかかり、モデルチェンジのサイクルが伸びるのも道理だ。

国内新車販売台数の推移。1990年をピークに減少傾向にあり、2008年以降は500万台前後で推移している(各種データより筆者作成)
国内新車販売台数の推移。1990年をピークに減少傾向にあり、2008年以降は500万台前後で推移している(各種データより筆者作成)
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 モデルチェンジの中身も変わっている。かつてのモデルチェンジでは、外観や内装のデザインは一新しても、エンジンやプラットフォームなどの中身は流用、というケースが多かった。これに対して、最近のモデルチェンジでは、新たなエンジンやプラットフォームを採用するなど、技術的にも新味を盛り込まないと、もはやユーザーは食指を動かさなくなっている。つまり、モデルチェンジにおカネがかかるようになったわけだ。

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