それは、実際の路上には、大面積の物体があまりにも多く存在するからである。現在の運転支援システムに使われているミリ波レーダーは、物体の位置が左右方向のどこにあるかはある程度判別できるが、その分解能はかなり低い。また上下方向の分解能は事実上ない。このため、もしあらゆる物体からの反射波をまともに認識していると、例えば高速道路の上方に取り付けてある案内板からも反射波を受けることになり、衝突する物体もないのに、車両にブレーキがかかるということになりかねない。

 こうした「誤認識」を避けるために、実際のミリ波レーダーでは、ある程度以上の面積の物体からの反射波は「車両ではない」と判断して、反射波を無視するように信号を処理している。具体的には、面積の大きい物体からの反射波は出力も大きいので、ある程度以上の大きさの反射波は無視するようにしているわけだ。これが、大きな物体からの反射波を認識しないようにしている理由である。

 このほかにも、路面にあるマンホールのフタからの反射波など、誤認識につながる物体は路上にたくさんある。だから、ミリ波レーダーでは、いろいろな「ノイズ」が混ざった反射波の中から、先行車両や歩行者、自転車など避けるべき障害物を検出するために、様々なフィルターをかけなければならないのだ。不幸なことに、今回のように真横になったトレーラーの側面のような物体は、現在の運転支援システムにおいては、面積が大きすぎて検出の対象外だったのである。

システムの限界を知る

 もちろん、運転支援システムを開発しているエンジニアは、こうした現在の技術の限界を承知しており、その改良に取り組んでいる。カメラで車両の側面を認識できないという問題については、画像を処理するプロセッサーの性能向上や、車両の側面を登録した「辞書」の整備により対処できるし、ミリ波レーダーでは、物体がどこにあるかを検知する能力を向上させることで、大面積の物体でも、それが路上にあると検知できれば障害物だと認識することが可能になる。2018年~2020年ごろにはこうした機能を盛り込んだ運転支援システムが実現すると見られている。ただし、そうした改良が実現する前に今回の事故は起きてしまった。

 二つの問題があるだろう。一つは、ドライバー側の問題、もう一つはメーカーの問題である。まずドライバー側については、当たり前のことだが、システムの限界を知って使うということが大前提になる。すでに多くの方面から指摘されていることだが、現在の運転支援システムは、自動運転システムではない。ドライバーがシステムの状態を絶えず監視し、安全を確保しながら使うことを肝に命じなければならない。