すべての車種がハイブリッドに

 新型アウディA8では、このレベル3の自動運転がクローズアップされているのだが、隠れた注目点はパワートレーンだ。新型A8は、排気量3.0Lおよび4.0Lのガソリンおよびディーゼルエンジンを搭載しているのだが(将来的には12気筒の6.0Lのエンジンが追加される予定)、その4種類のエンジンすべてに「マイルドハイブリッドシステム」が組み合わされているのだ。トヨタ自動車の「プリウス」などが採用しているような本格的なハイブリッドシステムとは異なる、より小規模なハイブリッドシステムだが、すべてのエンジンに電動化システムを組み合わせたのは欧州のメーカーとしては異例だ。

 新型A8のマイルドハイブリッドシステムで注目されるのは、電源に48Vシステムを採用したことである。読者の皆さんもご存知のように、クルマのバッテリーの電圧は12Vである。新型A8は、エンジンを始動する「スターター」と、エンジンの駆動力で発電する「オルタネーター」を一体化した装置〔ベルトで駆動するのでベルト・オルタネーター・スターター(BAS)とアウディは呼んでいる〕を搭載しているのだが、このBASはさらに、エンジンの駆動力を補助する役割も果たす。

オルタネーターの機能とスターターの機能を一体化し、駆動力補助の機能も持たせたBAS(ベルト・オルタネーター・スターター)(写真:アウディ)
オルタネーターの機能とスターターの機能を一体化し、駆動力補助の機能も持たせたBAS(ベルト・オルタネーター・スターター)(写真:アウディ)

 同様に、スターター/オルタネーターを強化してハイブリッド的な機能を持たせたシステムとしては、日産自動車がセレナに搭載している「S-HYBRID」や、スズキがワゴンRなどに搭載しているマイルドハイブリッドなどがあるが、日産はそのために専用の12Vバッテリー、スズキは専用のリチウムイオン電池を組み合わせている。これに対してアウディの48Vシステムでは、通常の12Vの鉛電池に加えて、電圧を48Vに高めたリチウムイオン電池を搭載することで、通常の12Vバッテリーよりもスターター/オルタネーターの出力を高めたものだ。

 欧州では現在、低コストの電動化手法として48Vシステムが注目されているのだが、その理由は、大容量の電池と大出力のモーターを組み合わせた本格的なハイブリッドシステムに比べて小規模なシステムであることに加え、メーカーの垣根を超えて共通の電源システムを採用することで、大幅な低コスト化が図れること。もちろんそのぶん、燃費向上効果も限定的なのだが、費用対効果に厳しい欧州のユーザーでも受け入れやすい電動化システムとして、今後欧州のメーカーは積極的に48Vシステムを取り入れようとしている。もちろん、簡易的なハイブリッドシステムだけでなく、新型A8にはプラグインハイブリッドシステムを搭載した車種も用意される。

 レベル3の自動運転機能は、日本ではまだ道路交通法で認められていない。このため、新型A8が国内に輸入されても、当面はこの機能を利用できない状態が続く。冒頭で、これまで電子制御義技術の採用で先行してきた日本メーカーが、ここにきて欧州メーカーに、むしろリードを許していると書いたが、その背景には各国政府の姿勢も影響を与えているだろう。自動運転技術の開発は、企業レベルを超えた、国レベルの競争になりつつある。

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