日産自動車の「スカイラインクーペ」やトヨタ自動車の「レクサスRC」などを残すのみで、国内市場では “絶滅危惧種”となりつつある2ドアクーペだが、これらと比べてもEクラスクーペが異彩を放っているのは「2ドアハードトップ」であることだ。ハードトップとは、センターピラーのない車体構造のことで、このEクラスのドアはサッシュレス(窓枠がない)であるうえに、センターピラーもない。さらにドアウインドーもサイドウインドーもすべて収納可能なので、窓を全開にすると高い開放感を得ることができる。これに対して、Cクラスクーペはセンターピラーを持つ構造なのが異なる(ちなみに上級のSクラスクーペもハードトップである)。

新型Eクラスクーペのサイドウインドーを全部引き下げたところ
新型Eクラスクーペのサイドウインドーを全部引き下げたところ

 デザインの差が大きかった先代のCクラス、Eクラス、Sクラス(のセダン)に対して、現行型はC、E、Sクラスとも、よく似ている。EクラスをSクラスと見間違えたり、極端な場合、CクラスをSクラスと見間違えてしまうこともあるくらいだ。新型Cクラス、Eクラス、それにSクラスクーペのフロント周りやテールランプのデザインもよく似ているのだが、セダンよりも見分けやすいのは、リアピラーの形状がそれぞれ異なっていることだ。Cクラスクーペはリアピラーの根本でウエストラインが切れ上がっているし、Eクラスは水平基調で、大きな三角窓が設けられている。そしてSクラスは後ろ上がりのウエストラインでそれと分かる。

内装はまるでSクラスクーペ

 新型Eクラスクーペの内装は、Eクラスセダンとほぼ共通である。もともとEクラスのインストルメントパネルのデザインがかなりSクラスに近いので、自動的にEクラスクーペもSクラスセダン/クーペに近いデザインということになる。ただし、Eクラスクーペで独自なのは、空調の吹き出し口のグリル形状である。セダンではルーバーの形状が横基調なのに対して、クーペでは放射状の、よりスポーティなデザインとなっている。これだけでも雰囲気がずいぶん違うから不思議だ。

新型Eクラスクーペの空調の吹き出し口
新型Eクラスクーペの空調の吹き出し口

 写真がなくて恐縮なのだが、試乗車のインストルメントパネルは水色の本皮をあしらった贅沢かつ個性的なもので、質感に文句があるはずもないのだが、そこに張られた黒色の樹脂製パネルの質感は、表面に木の導管のような模様を付けてあるのだが、本皮の部分に質感が及ばず、改良の余地ありと思った。

 それではEクラスクーペの自動運転機能を試してみよう。Eクラスクーペは、エクストレイルの3倍以上の値段だけあって、自動運転システムもエクストレイルよりもはるかに複雑だ。エクストレイルがセンサーとして単眼カメラ1個で済ませているのに対して、Eクラスクーペは前方監視のためだけでも、長距離用と中距離用の二つのミリ波レーダーと、ステレオカメラの三つのセンサーを備える。このほか後方監視用のミリ波レーダーを二つと、周辺監視用の6つの超音波センサーがあり、合計で11個ものセンサーを備える計算だ。

次ページ こちらも安心して任せられるが…