ターボラグは感じず
1.0L・3気筒のターボエンジンは、ノーマル仕様のポロにも搭載されているのだが、ポロに積まれているのが最高出力77kWなのに対して、up! GTIに積まれているのは最高出力85kWの高出力版だ。アクセルを踏み込むと、低音のスポーティなサウンドを響かせながら、排気量がたった1.0Lとは信じられないような太いトルクで1.0トンの車体を加速させていく。
今回の試乗は箱根周辺で実施されたのだが、一般車両も多く、フル加速を試す機会があまりなかった。それでも、手動変速機と組み合わせていることもあって、2速で十分に引っ張ってから3速につなげば、シートの背もたれに身体が押し付けられるような、とまではいかないが、十分にスポーティな加速が得られる。こういう操る楽しみはやはり手動変速機ならではのものだろう。1.0L・3気筒という小排気量エンジンなのでターボラグが心配だったが、実際にはアクセル操作からほとんど遅れなしに加速が始まる。日本の道路環境では、むしろこの程度の出力のほうが、エンジンを使い切る楽しさがあると感じた。
エンジンと併せて感心させられたのがシャシー性能だ。この小さい車体に専用の17インチタイヤをはかせ、専用チューニングのサスペンションを組み合わせているのだから、安楽な乗り心地とはいえないが、とてもバランスのいい足回りだと感じた。up! GTIの車体サイズは軽自動車を一回り大きくした程度で、ホンダ「フィット」やトヨタ自動車「ヴィッツ」などのいわゆるBセグメントの車種よりも一回り小さいAセグメントに属する。しかし、車体剛性は一つ上のクラスの国産Bセグメント車に比べても高いと感じる。
とはいえ、VW車同士での比較では、この後に紹介する上級車種のポロや、さらにその上のゴルフなどに、車体の「剛性感」で一歩譲るのは否めない。しかし、車体が硬すぎないことがup!では美点になっている。路面から伝わる衝撃が、身体に伝わる前に車体でしなやかに吸収される感触があるからだ。ストロークの初期からよく効くダンパーとも相まって、スポーティでありながらも乗り心地は快適だ。この点は、あとに試乗した上級車種のポロGTIよりもむしろ上だと感じた。
このように走行にかかわる部分の性能は高いのだが、平均燃費は燃費計の読みで10.8km/Lと、車体が小さい割にそれほど良好な値を残せなかった。今回は試乗コースが山道の上り下りに限られ、走行中は3速を多用していたこと、加速のための踏み込みも多かったことなどが災いしたとみられる。逆にいえば、多少スポーティな走りをしてもこの程度の値が出るのだから悪くないという見方もできるだろう。いずれにしても、ターボエンジンの特性として、おとなしく走れば燃費は伸びるが、アクセルを踏み込んだときの悪化の度合いは自然吸気より大きい。市街地をおとなしく走れば、20km/L近い燃費を出すことも可能だろう。ちなみにJC08モード燃費は21km/Lである。
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