同様のことはエンジン出力についてもいえる。up! GTIの最高出力は85kW(116PS)と、初代ゴルフGTIの80.6kW(110PS)に近い。もっとも初代ゴルフGTIが1.6Lの自然吸気エンジンなのに対してup! GTIは排気量1.0L・直列3気筒の直噴ターボエンジンだから、最大トルクは初代ゴルフGTIの140N・mに対して200N・mもある。一方で最近の厳しい安全・環境規制に対応するため、車両重量は初代ゴルフGTIの820kgに対してup! GTIは1000kgと200kg近く重い。ただし、高トルクのエンジンのおかげで、up! GTIはこの重量のハンディキャップを感じさせない走りを見せる。
GTIのアイコンは抜かりなく
up! GTIにはフロントグリルの赤いラインだとか、アルミホイールを透かして見える赤いブレーキキャリパー、そしてシート地にあしらわれたタータンチェックなど、外観や内装の随所にGTIの“伝統”ともいうべきモチーフが盛り込まれている。筆者の好みからいうと、羊の皮をかぶった狼としてはもう少し外観や内装はさりげなくていいのではないかと思うのだが、そこはやはり“らしさ”が必要だという判断なのだろう。
これはGTIに限ったことではないのだが、up!はVWで最もベーシックな車種だけに、ナビゲーションシステムはスマートフォンにVWの純正インフォテインメントアプリ「Volkswagen maps+」をインストールして使うことを前提とする。同クラスの国産車が普通にカーナビを装着していることが多いことを考えると相当割り切った仕様だと感じるが、最近のスマートフォンは画面の大きいものも増えているし、スマートフォンの通信機能を活用するので最新の道路状況を的確に反映することができる。実用面ではメリットが大きい判断だと思う。

ではいつもより少し早いが、走り出してみよう。始めにちょっとがっかりしたのは、ステアリングの調整機構がチルトだけでテレスコピック(長さ方向の調整)機構が装備されていないことだ。以前にノーマルのup!に試乗したときにはあまり気にならなかったのだが、up! GTIは6速手動変速機(6MT)仕様のみなので、クラッチを踏み込むためにシートポジションを自動変速機のクルマよりも丁寧に調整していて気づいたのだ。筆者の足が短いのが悪いのだろうが、シート位置をクラッチペダルに合わせると、ステアリングがやや近く感じる。
もう一つ気になったのが、これはVW車全般に言えるのだが、座面が長いことだ。尻の位置をきっちりシートの背もたれに押し付けるように座ると、膝裏がややシート座面の前端に当たる。ステアリングの位置、シート座面の長さ、どちらも運転に支障があるわけではないのだが、筆者よりも小柄な女性がオーナーになったらどうなるか、ちょっと考えてしまった。
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