この中で永平寺町は、えちぜん鉄道の永平寺口駅と永平寺を結ぶ全長約6kmの遊歩道に誘導線を敷設して実験を実施した。誘導線を用いた自動走行技術の特徴の一つは、多少路面に積雪があっても走行が可能なことで、2018年2月の実験では、20cm程度雪が積もった圧雪路でも、自動走行が可能なことを実証した。

永平寺町における実証実験の様子。圧雪路でも走行できる(資料:ヤマハ発動機 稲波純一氏の発表資料)

無人タクシーサービスは環境規制にも有効?

 IHSマークイット プリンシパル リサーチアナリスト、日本パワートレイン・フォーキャストの波多野通氏は、2030年までのパワートレーンの見通しについて講演した。同氏の講演で興味深かったのは、自動運転技術を活用した無人タクシーの導入が、環境規制への対応にもつながる可能性がある、という視点だ。

 米国では、オバマ政権下で企業平均燃費規制(いわゆるCAFE規制)を年々強化する方針が打ち出されていた。欧州や日本の燃費規制に比べれば緩い数値なのだが、日本の多くの完成車メーカーは2018年の規制値を達成する見通しなのに対して、GMやフォード、FCA(フィアット・クライスラー・オートモービルズ)などは未達になるとIHSでは予測していた。

 ところがトランプ政権では、CAFE規制を緩和することを表明し、世界的な環境規制の強化とは逆行する動きを鮮明にしている。一方で、伝統的に環境規制に熱心なカリフォルニア州では、CAFE規制を緩和しない方針を発表したほか、EVや燃料電池車(FCV)などのゼロエミッション車(ZEV)の一定比率の販売を義務付ける、いわゆる「ZEV規制」も緩和しないことを表明している。つまり、カリフォルニア州と連邦政府の間で、環境規制をめぐる方針が対立する構図になっているのだ。

 こうした中で、GMは2019年から、自動運転技術を使った「無人タクシー」を限定地域で実用化する方針を表明している。一方でGMのメアリー・バーラCEOは「現在の環境規制は所有から利用へ、あるいはシェア化・自動化へという大きな流れに十分対応できていない」とも発言している。ZEV規制の達成が困難な理由の一つとして、メーカーがEVやFCVなどの商品を用意しても消費者が購入しようとしないことが挙げられており、その大きな原因の一つとして、そもそもディーラーの商品に対する理解が不十分で、消費者にうまく売り込めていないことがあるようだ。

 これに対して、自動運転技術を使った無人タクシーは、当初は自社または子会社での運行が中心になると考えられるので、一般消費者に販売するよりも台数の拡大は容易になると考えられる。今後、もしカリフォルニア州で、ZEV規制での販売台数に自社または子会社などが運行するシェアリング用の車両も含めるようになれば、無人タクシーの拡大は、「所有から利用へ」というビジネスモデルの組み換えだけでなく、環境規制の達成にも貢献するという一石二鳥の効果を完成車メーカーにもたらすことになる。

 ここまで紹介したのは一部に過ぎないが、今回のブリーフィングに参加して、クルマの「自動化」や「電動化」が、単なるクルマの変化にとどまらず、人の「移動」そのものが見直される機会になっているということを改めて実感した。

 トヨタ自動車は、2018年1月に開催された世界最大級の家電見本市「CES 2018」で、モビリティ・サービス専用の自動運転EVのコンセプト車「e-Palette Concept」を発表しました。2020年に実証実験を開始することを目指しています。日産自動車も2018年3月に自動運転EVを使ったモビリティ・サービス「Easy Ride」の実証実験を横浜・みなとみらい地区で実施しました。トヨタや日産だけではありません。いま世界の完成車メーカーはこぞって「サービス化」に突き進んでいます。それはなぜなのでしょうか。

 「EVと自動運転 クルマをどう変えるか」(岩波新書)は、当コラムの著者である技術ジャーナリストの鶴原吉郎氏が、自動車産業で「いま起こっている変化」だけでなく、流通産業や電機産業で「既に起こった変化」も踏まえて、自動車産業の将来を読み解きます。自動車産業の変化の本質はEVと自動運転が起こす「価値の革新」です。その全貌を、ぜひ書店でご確認ください。