実際に自動運転車の安全性を評価するうえで最大の課題は「テストシナリオをどう作るか」だ。これを可能にするために、2019年度から各社連携の上、交通流観測データなどを収集・共有してシナリオデータを作成することや、作成したシナリオをデータベース化すること、ドイツで進められている「PEGASUSプロジェクト」など国際的な取り組みとも連携していくことを明らかにした。まだ時間はかかりそうだが、重要な一歩を踏み出すといえそうだ。

日本各地で「ゴルフカート」を使った実証実験

 冒頭で紹介したゴルフカートの活用について講演したのはヤマハ発動機モビリティ技術本部EM開発統括部長の稲波純一氏である。冒頭に挙げた、自動運転機能を備える電動ゴルフカートを地域の移動サービス向けに活用する実証実験について紹介した。

 ヤマハが商品化している電動ゴルフカートは、小型乗用車の半分程度の車両重量で、専有面積も6割程度の小型車両である。最高速度は20km/hだが、それほど長くない移動距離を想定すれば十分な速度だ。また、ゴルフ場内での自動走行を可能にするために、電磁誘導式のシステムを1996年から採用している。このシステムは、道路に埋設された誘導線に電流を流し、この誘導線の周囲に発生する磁界を車両側の三つのセンサーで検知し、センサーからの信号をコンピューターで解析して車両の位置を割り出し、誘導線に沿って走行するように車両の動きを制御するというものだ。

 また誘導線ではなく、道路に埋め込まれた磁石の磁力を検知するセンサーも搭載しており、例えばカーブの前に磁石を埋め込んでおいて、速度を落とすように制御したり、停車させたい位置に磁石を埋め込んでおいて停車させることもできる。車両の後方には100kHzの電波を発射し、後続車はこの電波を車両前方に取り付けたアンテナで検知することで、先行する車両が停止した場合に追突を防いだり、自動的に追従走行したりすることができる。

 この電動ゴルフカートの改造車両は、2002年にオランダで開催された国際花の博覧会に使われたり、2013年に千葉県の柏の葉地域の歩行者専用区域内での移動実験などに使われたが、大きな転機となったのが石川県の輪島市の事例だ。地元の商工会議所が、高齢者や子育て世代などの移動弱者や、観光客に利便性の高い移動手段を提供しようと考え、道路交通法に合致するようにウインカーなどを取り付けた電動ゴルフカートを使った「新交通システム」の実証実験を2014年から開始したのだ。当初は手動運転から始め、2017年には日本で初めて、1000mの区間に誘導線を敷設して公道での自動運転を開始した。

 この、輪島市での公道走行が契機となり、自動運転ではないが、大分県の姫島や、京都府の伊根町でも新たな交通手段として電動ゴルフカートが活用され始めている。2017年9月から始まった国土交通省の「中山間地域における道の駅等を拠点とした自動運転サービス」の実証事業では、実証実験を実施する13個所のうち、5個所で自動走行システムを搭載したヤマハの電動カートが使われた。この実験車両ではステレオカメラを使った障害物検知機能が搭載された。

 これとは別に、ラストマイル自動走行の社会実装を目的とする国交省と経産省の「スマートモビリティシステム研究開発・実証事業」の一環で、先に挙げた輪島市に加え、福井県の永平寺町や沖縄県北谷町で、ヤマハの電動カートを使った実証実験が実施された。このラストマイル自動走行というのは、移動の困難な高齢者など向けに、最寄りの主要な交通機関と自宅の間の移動手段を提供しようというものだ。