この記事の冒頭で、最近のユーザーの要望として、「安心・安全」が浮上しているということを紹介したが、安全・安心というのは、自動ブレーキなどの先進安全装備を搭載しているということばかりではない。高速道路で合流するときに十分な加速性能が得られず、怖い思いをしたなら、そのクルマは安心とはいえないからだ。

 新型ミライースでは、軽量化した車体に加え、アクセルを踏んだ時の変速プログラムを見直し、加速性能を向上させた。例えば発進から5秒で走行できる距離は従来の33mから36mへと3m伸び、時速40kmから80kmへの追い越し加速に要する時間は従来の10.4秒から9.8秒に短縮している。

気持ちの良い乗り味

 今回も前置きが長くなったが、ミライースに乗り込んでみよう。試乗したのは、上から2番めのグレードの、X“SA III”だった。まず感じるのは、内装の質感が従来型よりも大幅に向上していることだ。新型ミライースの上級車種は、上半分が黒色で、下半分がクリーム系の2色の樹脂を一体成形しているのが特徴で、この2色一体成形は従来のミライースから引き継いでいる。ただし、従来型はお世辞にも質感が高いとはいえなかった。

質感が向上したインストルメントパネル

 インパネの質感を向上させる手段としては、ソフトパッドをかぶせる、樹脂の表面に塗装する、などの手法があるのだが、ミライースのような車種にはコスト的に使えない。そこで新型ミライースでは、シボ(表面の細かな凹凸)の形状を工夫して、表面のテカテカした光沢を抑え、安っぽく見えないように工夫している。造形も、従来型の曲面的な形状から、新型ではより直線的な形状に変更して、男性が乗っても恥ずかしくないテイストの内装に仕上がっていると感じた。

 シートの出来もいい。新型ミライースのシートは軽量化された新しいシートフレームを使っているのだが、軽量化の悪影響は感じなかったし、ヘッドレストをシートバックと一体化したシンプルな形状なのだが、ヘッドレストの位置も筆者にはフィットしていた。

 走り出してまず感じるのは良好な乗り心地だ。ムーヴと同じプラットフォームを使っているのだが、ムーヴほどのボディ剛性は感じられない。ただし、サスペンションのセッティングもムーヴよりもソフトで、それがボディ剛性とマッチしている。ソフトな乗り心地といっても、ダンパーが効いていて、ふわふわし過ぎることもない。

 もちろん、こういうサスペンションセッティングだと、速度領域が時速100km以上の高速域では、やや不安を感じるようになるのかもしれないが、そういう領域はある程度見切って、街中での乗り心地や使い勝手を重視した結果だ。この割り切りは、このクルマのキャラクターには合っているし、成功していると思う。

 その代わりと言ってはなんだが、向上したという加速性能は、期待ほどではなかった。車体が大幅に軽量化されていることもあり、かなり鋭い加速度をイメージしていたのだが、実際にはアクセルを強めに踏み込んでも、期待値ほどには速度が上がっていかない。少なくとも、目覚ましい加速力、という感じはしなかった。

 ただこれは、筆者の期待値が大きすぎたのだろう。交通の流れに沿って走る分には何の支障もないし、不足も感じない。ただ、高速道路の合流などでは、アクセルペダルをべた踏みしても、加速はややじれったいだろうと思う。これは自然吸気エンジンを積んだ軽乗用車のほとんどで感じることで、排気量0.66Lしかないエンジンの限界ともいえる。ただし、改良された結果としての加速力がこの程度だと、確かに従来型車では加速力に対する要望が多かったというのも頷ける。

 最後に、燃費についても触れておこう。今回の試乗コースは千葉・幕張周辺だったのだが、一般道を30km程度走った結果は、燃費計の読みで23km/L程度だった。かなり順調に流れていたとはいえ、エアコンをかけっ放しでこの値はかなり良好といっていいのではないかと思う。競合するアルトを試乗したときには、エアコンなしで20km/Lを少し超える程度だった。

 JC08モード燃費では、最も良好な値のモデル同士の比較で、アルトの37km/Lに対して、35.2km/Lと分が悪いミライースだが、実用燃費はアルトと同等以上に確保していると見ていいだろう。筆者はアルトのデザインを高く評価しているのだが、ミライースは、LEDを採用したヘッドランプが醸し出す先進感や、質感でアルトに勝る内装を備えており、アルトにとっては強力なライバルの出現といえる。