トヨタのTNGAでは、それぞれの車種を設計するルールを従来よりも厳格化することによって、部品の共通化率を高め、開発コストや部品コストの低減を図り、それによって浮いた開発リソースをそれぞれの車種の商品性向上に回すという狙いがあった。これに対して、ダイハツでは既に、軽自動車のプラットフォームはすべての車種で統合されており、プラットフォームの統合によるコスト削減はすでに達成されている。それでは、DNGAは何を目指すのだろうか。

ラインアップ全体で最適化

 ミライースの開発担当者によれば、DNGAの狙いは二つあるようだ。一つは、これまで個別の車種で進めていた部品の共通化の手法を見直し、軽自動車だけでなく、AセグメントやBセグメントの小型車まで、さらには日本向けだけでなく新興国向けの車種まで含めたラインアップ全体で、プラットフォームやコンポーネントを最適化することだ。

 このコラムの第57回でも触れたように、現在でもダイハツの小型車は軽自動車との部品の共通化を進めている。しかし現在は「軽自動車で使っている部品の中から使えそうなものを小型車にも使う」という段階にとどまっている。また、新興国向け車種「アギア」は、ミライースをベースとして開発されているが、もともとミライースは新興国向けの車種を考慮して開発されたわけではない。DNGAではこうした場当たり的な対応をやめ、開発の当初からラインアップ全体での共通化を考慮して、プラットフォームや個々のコンポーネントを開発するという方向に変えていくようだ。

 こうした部品の共通化は、ともすればそれぞれの車種の性能や品質が似通ってしまい、個性が薄まってしまう危険をはらむ。これを防ぐためには、それぞれの車種が達成するべき性能や品質をまず定めておき、部品を共通化しても、そうした要求性能や品質を達成できるかどうかを検証する必要がある。逆にいえば、部品の共通化を一層進めるためには、個々の商品の達成すべき性能や品質をきっちりと定めておく必要があるわけだ。そこで、DNGAの二つ目のテーマとしては、個々の車種の達成すべき品質や性能を「再定義する」ことを掲げている。

 実際スズキの新世代商品は、軽よりもAセグメント、AセグメントよりはBセグメントの車種のほうが、車体の剛性感や乗り心地、操縦安定性の確保などの点で上回るように、性能・品質がコントロールされていると感じる。これに対して、現在のダイハツの商品ラインアップでは、軽自動車の「ムーヴ」のほうが、Aセグメントの「ブーン」を、車体の剛性感や乗り心地などの面で上回っているというのが筆者個人の感想だ。DNGAの導入がすすめば、こうした「下克上」はなくなるだろう。

DNGAの要求を先取り

 ミライースはDNGAの思想に基づく新世代プラットフォームの採用には時期的に間に合わなかった。しかし、軽自動車でも一番ベーシックな車種として満たすべき性能や品質の基準では、DNGAの要求を達成するように開発したという。つまり、ミライースはベース車種としてDNGAの要求を先取りした車種といえる。これが、ダイハツがミライースを「DNGAの原点」と呼ぶゆえんだ。

 実際、今回のミライースは、プラットフォームは従来からの流用とはいえ、構成部品のほとんどは新設計されている。フロアパネルやエンジンルーム内のフレームには、厚みの異なる鋼板をレーザー溶接した「差厚鋼板」を採用し、強度の必要な部分だけ厚みを増すことで軽量化しているし、サスペンション周りの部品も新設計になっている。

 プラットフォームではないが、車体側面の鋼板も「ハイテン」と呼ばれる高張力鋼板を使うことで、従来必要だった内部の補強材を減らして軽量化につなげているほか、バックドア、フロントフェンダーなどを新たに樹脂化して軽くした。この結果、新型ミライースの車両重量は従来型に比べて最大80kgも軽くなっている。これはプラットフォームを一新したスズキ「アルト」の60kgを上回る軽量化幅だ。

燃費の数値は据え置き

 これだけ車体を軽量化しているのだから、さぞかし燃費も良くなっているだろうというのが普通の見方だと思うが、実は新型ミライースのJC08モード燃費は、最も良好な車種で35.2km/Lと、従来型と同じである。その理由を開発担当者に尋ねると、意外にもユーザーからの要望は、燃費の向上よりも、走りの性能向上のほうがずっと強いのだという。