荒廃する三菱自の開発現場

 一方、スズキの会見と同じ日に、三菱自動車も今回の燃費偽装で4度目の会見を開いたのだが、そこで明らかになった事実は、同社の寒々とした開発現場の様子をうかがわせるものだった。

「性実部長および性実管理職は、燃費目標達成の難しさを認識していたにも拘わらず、燃費目標達成業務を子会社に丸投げの状態で、子会社管理職からの相談、報告があった場合しか対応していませんでした。さらに、子会社からの報告内容の検証をすることもなく最終設計品質確認会議等で報告しており、業務責任を果たしていませんでした。また、プロダクト・エクゼクティブ(以下、PX)および開発プロジェクト・マネージャー(以下、開発PM)も、走行抵抗の詳しい確認をせず、燃費値の測定結果報告を受けることに終始していました」(同社ニュースリリースより

 性能実験部(リリースでは性実部と表記)は、単に車両の実験をしてデータを取るだけでなく、エンジンのキャリブレーションという重要な業務を担っている。キャリブレーションとは、エンジンを制御するコンピューターの「燃料をどんな条件のときに、どんなタイミングで、どの程度の量を噴くか」など、エンジンの性能を左右する様々な数値(パラメーター)を、燃費や出力など様々な特性のバランスをとりながら最適化する業務で、いわばエンジン性能の最終仕上げともいえる業務である。ところが三菱は、この重要な業務を子会社である三菱自動車エンジニアリング(MAE)に丸投げしていたというのだ。

 しかも、制御だけで燃費は向上するものではない。車体の重量や各部の摩擦損失、エンジンの基本的な性能や変速機の特性など、クルマを構成するすべての要素がそろって、初めて燃費が向上するのであって、それなしに制御だけで燃費を向上させようとしても無理がある。このリリースの文面からは、無理な目標達成を押し付けられた性能実験部が、その業務を子会社に押し付け、現実から目をそむけ続けた様が目に見えるようだ。しかも、子会社をそうした状況に追い込んでおいて「MAEに十分な技術力がなかった」と会見で発言した益子修会長の不見識ぶりも目を覆うばかりだった。

 中尾龍吾副社長は同会見で、改ざんに関与した社員の心境について「あきらめに近い気持ちだったのかもしれない」と述べているが、経営陣の意識がこの程度では、確かに現場がそうした心理になっても仕方がないだろう。ここまで荒廃した開発現場をいかに立て直すか。日産が三菱を復活させられるかどうかは、まずその点が試金石になる。