その後、2016年1月に発表した第2世代の「DRIVE PX2」では、ディープラーニングの演算能力が第1世代のPXに対して10倍以上に向上したが、消費電力は250Wのままだった。これに対して今回、トヨタが数年後に搭載を予定するという次世代のDRIVE PXには、エヌビディアの次世代GPU「Xavier(エグゼビア)」が搭載され、消費電力は大幅に低減する見込みだ。

 Drive PX2の最上位版には二つのGPUと二つのCPUが搭載されているが、Xavierはこれを1チップに集約することが可能な高い演算性能を備えている。しかも消費電力は20~30Wにまで低減したとしている。これでも車載半導体としては大きいのだが、ようやく市販車に搭載可能な水準にまで下がってきたといえる。

エヌビディアの次世代「DRIVE PX」。写真はエヌビディアがボッシュと共同開発しているXavierを採用した次世代DRIVE PXのイメージ図だが、トヨタ向けも似通った構成になるだろう(写真:エヌビディア)

ディープラーニングではデファクトに

 しかし、消費電力が下がったというだけでは、GPUを多くの企業が自動運転車に採用していることの理由にはならない。GPUが多くの企業で使われているのは、ディープラーニング・プログラムを構築するための標準的な開発環境で、GPU(およびCPU)がデファクト・スタンダードになっているからだ。つまり、現時点において、自動運転車の開発にディープラーニングを使おうと思えば、GPUを選ばざるを得ないというのが現在の状況なのである。

 トヨタが採用したことで、エヌビディアは勢いづいている。トヨタとの協業を発表した5月10日と、翌11日の2日間だけで、エヌビディアの株価は22%も上昇した。もっとも、他の半導体大手も、エヌビディアの独走を許さないだろう。世界最大の半導体メーカーである米インテルは、このコラムの第66回でも紹介した車載半導体で独自の高い技術を持つイスラエル・モービルアイを約150億ドルで買収すると2017年3月に発表した。スマートフォン向け半導体で最大手の米クアルコムに至っては、車載半導体では世界最大手のオランダNXPセミコンダクターズを約470億ドルという巨費で買収すると2016年10月に発表している。

 インテルはパソコン用半導体での覇者であり、クアルコムはスマートフォン用半導体での覇者である。自動車業界は、パソコン、スマートフォンに次ぐ、3番目の半導体の巨大市場になることが確実視されている。この市場での覇権をめぐり、巨大企業同士のカネにものを言わせたなりふり構わない争いになっているわけだ。トヨタとの協業で一歩抜け出したかに見えるエヌビディアだが、このまま逃げ切れるかどうかは予断を許さない。

10年後、自動車関連ビジネスで勝者になるには、新たなビジネスモデルや社会システムの姿を描く「構想力」が重要です。「次世代自動車ビジネス研究会」は、これから自動車ビジネスがどう変化し、自動車産業および周辺産業にどのような影響を及ぼしていくか、どんなビジネスチャンスやリスクがあるかを学び、議論する場です。シーズン1は5月~7月に、シーズン2は9月~11月に、それぞれ全5回で開催します。シーズン1・第2回はエヌビディア技術顧問の馬路徹氏も登壇します。幅広い業界の方々のご参加をお待ちしております。
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