従って、日産のコンパクトカー「ノート」や、今夏に全面改良が予定されているミニバンのセレナを三菱の販売店に供給すれば、即効性のあるカンフル剤になり得る。この他にも、OEM供給できる車種はあるだろうが、まずはこの2車種が候補になるはずだ。実際、軽自動車の商品力の回復には時間がかかるだろうから、こうしたカンフル剤がないと三菱の販売店が持たないだろう。ここがまずはゴーン社長の言う「ウイン・ウイン」の関係になる。

プラットフォーム共通化のメリットは大

 こうした販売面での支援が短期的なシナジー効果だとすれば、中長期的に、より大きなシナジーを生み出すのが、ゴーン社長が記者会見でも触れていたプラットフォームの共通化だ。日産は現在、CMF(コモン・モジュール・ファミリー)と呼ぶモジュール構造を備えた新世代のプラットフォームへの切り替えを進めている。第一弾となるC/Dセグメント向けの「CMF C/D」が2013年から「エクストレイル」「ローグ(北米向け車種)」「キャシュカイ(欧州向け車種)」などのSUV(多目的スポーツ車)に採用され始めたほか、仏ルノーの車種でも採用が始まっている。

 自動車専門の調査会社であるIHSオートモーティブの予測によれば、ルノー・日産グループの2020年の世界生産台数は、三菱との提携を前提としなくても約1000万台に達し、このうち250万台以上が、CMF C/Dを採用した車種になると見込まれている。

 一方で、三菱の世界生産台数は約120万台(2014年)で、このうち最も販売台数の多い車種は小型SUVの「RVR」で20万台、2位がピックアップトラックの「トライトン」(国内未発売)で17万5000台、3位がアウトランダー(PHEV含む)の14万6000台、4位がミラージュの9万7000台、5位が「ギャランフォルティス」の9万6000台となっている。

 実は、生産台数では軽自動車が約24万台で最も多いのだが、日産ブランドでの販売台数が17万台弱と多く、三菱ブランドでの販売台数は7万5000台に過ぎないため、上のランキングには入っていない。上記の5車種と軽自動車で三菱の世界生産台数の約8割を占める。

 このうち、RVR、アウトランダー、ギャランフォルティスの3車種はCセグメントの車種で、基本的に同じプラットフォームを使っている。これらの車種のプラットフォームが、将来的には日産のCMF C/Dに統合されていくことになるだろう。三菱のCセグメント車の生産台数の合計は約44万台だから、Cセグメント車で日産と三菱のプラットフォーム統合が2020年までに実現すれば、日産のCMF C/Dプラットフォームの生産台数は2020年には300万台を超え、量産効果を一段と高めることになる。部品調達のコストの引き下げにも貢献するだろう。

 三菱は、新型RVRの開発において軽量化に失敗し、2016年に予定していた発売を2019年以降に遅らせたと伝えられている。日産の最新プラットフォームであるCMFが使えることになれば、開発コストの圧縮と商品力の向上にも貢献するだろう。

 同様のことはミラージュにもいえる。日産は2016年から、「マーチ」「ノート」などのコンパクトカーに使っている「Vプラットフォーム」や、「ジューク」「シルフィ」などに使っている「Bプラットフォーム」に代わる「CMF B」と呼ぶ新世代プラットフォームを採用した車種を発売し始める計画だ。

 CMF Bを採用した車種は、IHSオートモーティブの予測では2020年に350万台に達し、ルノー日産グループで最も生産台数の多いプラットフォームになる。ミラージュの生産台数は、コスト削減が強く求められるコンパクトカーとしては少ないのだが、日産のプラットフォームを活用できれば、その量産効果を生かしてコスト競争力と商品力の大幅な向上が可能になるはずだ。

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