今度は外周の高速周回路に出る。バンクのついたカーブを、今回は時速50km程度で、一番下のレーンをゆっくりと走る。お恥ずかしい話だが、ここでもあまり違いは分からない。同乗したエンジニアから「すごく丁寧にステアリング操作されていたので分かりにくかったかもしれませんね。私も最初、よく分からなかったんですよ」などとフォローしていただく。

 ところが、違いがはっきり分かるシチュエーションが現れた。高速周回路の直線部分で、急なレーンチェンジを試みたときだ。ここで「あれ?」と思ったのは、新技術を「オフ」にしているときよりも「オン」にしているときのほうが滑らかにレーンチェンジできることだ。ステアリングを切り始めると、クルマがすっと向きを変え、レーンチェンジ後のふらつきもすぐに収まる。でもなぜなのか、その理由が分からない。後席に座っている女性の広報担当者は、その違いを筆者よりも、もっとはっきり感じるらしい。

クルマの応答性が向上

 ここまでの試乗を終えて、さきほどの説明会場に戻る。ここで初めて、今回の新技術の詳細な説明があったのだが、その「種明かし」は後にして、その後に試乗した感想について先に説明しよう。

 まず直進していて横から急に障害物が出てきた状況を想定して、時速50kmで直進し、障害物を左に避けるようにステアリングを切り、再び右にステアリングを戻す、という操作をしてみる。やはり先ほどのレーンチェンジと同じように、切り始めのクルマの応答がよく、またステアリングを戻した時の、車体姿勢の収まりもいいので、システム「オフ」の場合に比べて余裕を持ってステアリングを操作できる。有り体にいえば「ラク」に操作できるのである。

 次に半径の小さい、急なカーブが続く短い周回路を走ってみた。こういうステアリングを頻繁に切る必要のある状況でも、システム「オン」のほうがラクに運転できる。ステアリングに対する車両の応答が良く、自分の操作の結果がすぐに分かるので、結果としてステアリングの切り過ぎや、切り足りない場合の修正が少なくて済むからだ。人間の身体は順応性が高いので、すぐにシステムの有り難みに慣れてしまうのだが、システムを「オフ」にして再び同じコースを走ってみると、明らかに車両の応答性が低下して、システム「オン」の有り難みが分かる。

 では「オン」と「オフ」でいったい何が違うのか。いよいよ「種明かし」をしよう。今回の技術を理解するためには、クルマのタイヤがどんな仕事をしているかをまず理解しなければならない。当たり前のことだが、ドライバーはステアリングを操作してタイヤの向きを変えることで、車両を旋回させる。同時にタイヤは、クルマを前に進める「駆動」という仕事も担っている。この「操舵」と「駆動」という仕事はどちらも、タイヤと路面の間の摩擦力によって実現している。

タイヤは路面との摩擦力によって「駆動」と「操舵」という仕事を果たす

 当たり前のことだが、タイヤと路面の間の摩擦力は、路面にタイヤを強く押し付けるほど高まる。マツダも今回の発表会で例えに使っていたのだが、消しゴムを紙に強く押し付けるほど、よく消えるのと同じことだ。いくらタイヤに強い駆動力を加えても、タイヤを路面に押し付ける力が不十分だと、タイヤは空回りするばかりである。これは駆動力だけでなく操舵力も同じことで、クルマの向きを変えるための力も、やはりタイヤを路面に強く押し付けるほど強まる。