もっとも、クルーガーVをベースとしてトヨタが2008年に国土交通省の型式認証を受けたFCV「FCHV-adv」は、エンジンルーム内に燃料電池やモーターを収めた当時としては珍しいレイアウトを採用していた。70MPaというそれまでの2倍の圧力で水素を貯蔵するタンクを搭載し、室内空間を維持したまま830km(10・15モード)と、航続距離をその前のタイプの2倍以上に延ばしたのも大きな特徴だった。
MIRAIは燃料電池を床下に
ところが、である。トヨタのFCVである「MIRAI」は、なんと燃料電池をエンジンルーム内に置いていたFCHV-advのやり方をやめ、運転席のフロア下に燃料電池を配置するレイアウトに変更したのだ。燃料電池やバッテリーといった重量物をなるべく車体の重心近くの低い位置に集めることで、車両の運動性能を向上することを狙った。これは、ホンダの先代のFCVであるFCXクラリティの考え方に近い。
一方のホンダの最新FCVであるクラリティFCは、燃料電池や駆動モーターなどの動力源を、すべてエンジンルーム内に納めたパッケージングが特徴だ。燃料電池と駆動モーターを合わせた大きさを、同社のV型6気筒エンジン+変速機とほぼ同等の大きさにすることで、これを可能にした。このレイアウトは、むしろトヨタの先代FCVであるFCHV-advに近い。

つまり、トヨタとホンダのFCVは、先代と最新型で、それぞれレイアウトをそっくり入れ替えたような格好になっているわけだ。FCVという同じ目的の車両を開発するのに、両社は正反対の選択をしたわけで、ダウンサイジングエンジンに次いでの出来事だから、これは非常に興味深い。
横展開を視野に
そこでクラリティFCの開発責任者である清水潔氏に、なぜ先代のFCXクラリティとはレイアウトを変えたのか聞いてみた。大きな理由は2つあるという。1つは室内スペースの問題だ。クラリティFCと先代のFCXクラリティで、室内の絶対的なスペース(容積)は大きくは変わらないのだが、先代は燃料電池を納めるセンタートンネルが大きく、それが後部座席にまでつながっているため、乗車定員が4人になっていた。「セダンなら5人乗れるべき」(清水氏)というのがレイアウト変更の理由の1つだ。
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