
またもやトヨタとホンダの選択が正反対になった――。度重なってこういうことが起こると、3度目も期待したくなる。ホンダの新型燃料電池車(FCV)「クラリティ フューエルセル(FC)」の話である。筆者は、この連載の第5回や第15回で触れたように、FCVの早期の普及には懐疑的だ。しかしその理由についてはもう既に十分過去2回のコラムで書いたので、今回は純粋に技術的な興味からホンダの新型FCVを取り上げてみたい。
冒頭で「度重なって」と書いたのはこの連載の第26回で取り上げたホンダとトヨタのダウンサイジングエンジンで、両社が正反対の判断をしたからだ。非常にマニアックな話ではあるのだが、ホンダはダウンサイジングエンジンの開発において、ベースエンジンが前方から吸気し、後方から排気するタイプだったのを、後方から吸気し、前方から排気するように吸排気の方向を逆にした。これに対してトヨタは、後方から吸気し、前方から排気するベースエンジンだったのを、前方から吸気し、後方から排気するエンジンに作り変えたのだ。
燃費を向上させるため、エンジンのダウンサイズをするという目的は同じなのだが、その方法論が正反対だったわけだ。同様のことが、今度は燃料電池車(FCV)で起こった。
エンジンルームに燃料電池を納める
ホンダが2008年に国内でのリース販売を開始した先代のFCV「FCXクラリティ」は、センタートンネル内に燃料電池を納め、また車両の重心近くに重い部品を集めることで、全高の比較的低い、スタイリッシュな外観とスポーティーな走りを実現したのが大きな特徴だった。

それまでのFCVは、床下に燃料電池やバッテリー、水素タンクを納めるために、全高の高いSUV(スポーツ・ユーティリティ・ビークル)やミニバンタイプの車両をベースとして開発されたものが多かった。
例えば、FCXクラリティと同じころにトヨタ自動車と日産自動車がリース販売していたFCVは、トヨタが当時の「クルーガーV」、日産が当時の「エクストレイル」をベースとしたもので、どちらもSUVベースのFCVである。だから、全高が低くスポ―ティさを特徴とするFCXクラリティは当時、FCVのイメージを覆す画期的なクルマと言えた。
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