最近のカーナビの画面は、オーディオの操作や車両の状態の表示、さらにはスマートフォンと連携する機能などにも使われ、重要性が増している。このため、従来よりも見やすい位置に置くことが優先されたのだろう。新型ポロ以降に発表されているVWの新型車のインストルメントパネルも同様のコンセプトでデザインされており、今後発売されるVW車も同様のコンセプトの内装を備えるようになるはずだ。
一方でメカニズム的には、先に触れたアウディのQ2と共通点が多い。Bセグメント向けのMQBを採用していることや、排気量1.0Lの直列3気筒直噴ターボエンジンを積むことなどだ。リアサスペンションも、Q2の前輪駆動仕様と同じトーションビーム式が使われている。ただし1.0Lエンジンは、Q2に積まれているのが最高出力85kWの高出力仕様なのに対して、ポロに積まれるのは最高出力70kWの標準的な出力の仕様だという違いがある。じつはこの標準仕様の出力でも、先代ポロの1.2L・直列4気筒直噴ターボエンジンの66kWよりも高出力で、最大トルクも160N・mから175N・mに向上している。
乗り心地は硬め
では走り出してみよう。まず感じるのが、冒頭でも触れたように、国産車のこのクラスでは感じることのできない車体のしっかり感だ。ゴルフ並み、というと言い過ぎかもしれないが、それに近い車体の剛性感がある。一方でゴルフと大きく異なるのは乗り心地だ。Cセグメント車の中でも、非常に良好な乗り心地を実現しているゴルフに対して、ポロは快適さよりも「きびきびした動き」に重点を置いたサスペンションセッティングになっていると感じた。
具体的には、ばね設定がより硬めで、路面の形状をゴルフよりもダイレクトに伝えてくる。車体の大きさやホイールベースの長さに違いがあることも含め、快適さという点ではゴルフに譲る。一方で、ステアリングを切った時の車体の動きがより機敏で、操作に対する反応が分かりやすいという点では、ポロのほうが上だと感じた。
都内の一般道路で低速走行しているときには、路面の形状に応じて乗員が揺すられるので、もうすこし快適性に振ったセッティングでもいいのではないか、と思わないでもなかった。ところが、高速道路に入ると、俄然水を得た魚のように活気が増す。低速では硬いと感じた乗り心地がちょうど良くなり、ステアリングに対する車体の挙動が機敏なので非常に安心感がある。こういう走りなら、長距離走っても疲れが少ないだろう。硬めのセッティングのシートも、疲労の少ない走行に貢献する。
ただし、VW車全般にいえることなのだが、シート座面の長さがドイツ人サイズという感じで、小柄な女性だと、座面の前端に膝裏を合わせた場合に、お尻の位置が座面の一番後ろまで届かないかもしれない。最近の欧州車では、次回のこのコラムで取り上げるスウェーデン・ボルボの「XC40」のように、シート座面の長さを調節できるようになっているものがあるが、そういう機構がこのクルマの場合でも必要かもしれない。
気になる1.0Lの3気筒エンジンだが、アウディQ2を取り上げたこのコラムでも紹介した通り、3気筒というスペックから想像されるような安っぽい騒音や振動は一切ない。黙って乗せられたら、このクルマが3気筒だとは気づかないだろう。出力も十分で、ターボラグもほとんど感じられないから日常走行で不足を感じることはまずない。7速のDCT(デュアル・クラッチ・トランスミッション)は、注意深く観察すれば、発進時のスムーズさという点で最新のAT(自動変速機)には一歩譲るものの、これも黙って乗せられればほとんど感知できないレベルだろう。
新型ポロの室内の広さは、フィットやノートといった国産Bセグ車の中でも室内空間の広い車種と比べると、後席の余裕という点では一歩譲る。ただし、大人2人がきちんと座れるスペースは確保されている。トヨタ自動車「ヴィッツ」とは同程度で、マツダ「デミオ」よりは頭周りのスペースにやや余裕がある。
燃費は良好だ。今回80km程度走行した中で、高速走路と一般道路の比率は1:3程度だったのだが、最終的な燃費は燃費計の読みで15.3km/Lだった。同クラスの国産ハイブリッド車の実走行燃費は20km/L程度だから、カタログ燃費ほどの差はない。国産車の価格も上昇していることを考えると、輸入車が特別な存在ではなく、国産車と横に並べて比較できる時代になってきたと感じる。
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