また、先ほど出てきた「惰行法」とか「高速惰行法」というのは、走行抵抗の測定方法の名称だ。日本や欧州で使われているのが惰行法で、クルマを時速90km±5kmまで加速し、そこからギアをニュートラルに入れて惰性で走行し、速度が時速10km落ちるごとに、落ちるのにかかる時間を計測してクルマの走行抵抗を求める。風向きによってクルマの走行抵抗は大きく異なるから、同じコースを往復し、それを3回以上繰り返すことになっている。

 これに対して、主に米国で採用されている高速惰行法は、10km刻みではなく、高い速度に加速してギアをニュートラルにしたら、そこから低い速度まで一気に減速して、それにかかる時間を測定する手法だ。

見劣りする研究開発費

 ここまでで、三菱が今回「何をしたか」についてはご理解いただけたと思うのだが、やはりVWの事件と同様に、一番知りたいのは「何故」このような事件が起こったかということだ。もちろん、当の三菱自動車自身が「有識者による調査委員会を立ち上げ、そこで徹底的に究明したい」と言っているのだからその結果を待つしかないのだが、筆者は技術開発での遅れがこうした不正を招いたのではないかと考えている。それは単なるイメージではなく、数字を追っていけば、自然に出てくる結論である。

 まず、技術開発で最もベースとなる研究開発費を完成車メーカーごとに比較(2014年度の実績)すると、約1兆円のトヨタ、6000億円超のホンダ、5000億円を超える日産は別格として、三菱の研究開発費は746億円と、スズキの1259億円、マツダの1084億円、富士重工業の835億円も下回っている。乗用車メーカーで三菱を下回るのは465億円のダイハツ工業だけだ。

日本の乗用車メーカーの研究開発費の比較(2014年度)

 もっとも、スズキの世界生産台数が約300万台と、三菱の2.5倍以上あるのだから、研究開発費で上回るのはある意味当然といえる。そこで、この中で軽自動車メーカー4社だけを取り出し、さらにこの研究開発費のうち軽自動車に振り向けられるのはどの程度なのかを考えてみる。そこで、非常に粗い計算になるが、それぞれのメーカーの世界生産台数に占める軽自動車の比率が、そのまま研究開発費に充てられる比率だと考えてみると、それぞれのメーカーの軽自動車にかけられる研究開発費用は下のようになる(ホンダの場合は4輪事業の売上比率をまず考え、その中で、さらに軽自動車の生産台数比率を勘案して算出した)。

軽自動車にかけられる研究開発余力。各社の軽自動車の生産台数比率を研究開発費にかけて算出した

 すると、非常に大雑把にいって、ホンダの約400億円、スズキとダイハツの約300億円に対して、三菱自動車は180億円となった。しかも実際には、この比率以上に三菱の研究開発費用は見劣りすると考えられる。なぜなら、スズキやダイハツの数字は、世界生産台数から、純粋に国内で生産する軽自動車の比率だけを出して、上の数字を算出したが、実際にはスズキもダイハツも、海外で生産している車種の多くが軽自動車の技術をベースとしており、世界生産台数に占める実質的な軽自動車の比率は、もっと高いと考えられるからだ。