富士重工業が年内の発売を予定する新型「インプレッサ」。新開発の次世代プラットフォームを採用する

 最近元気がある完成車メーカーといえば、マツダと富士重工業(スバル)だろう。国内生産比率の高い両社は円安の追い風もあって、マツダは2015年3月期の決算で、経常利益、営業利益とも過去最高の業績を挙げているし、富士重工業に至っては、3年連続で、売上高、各利益とも過去最高を更新している。しかも富士重工業の2014年度の売上高営業利益率は14.7%と、トヨタ自動車の10.1%をも大きく上回る。

 その富士重工業の快進撃の源は「選択と集中」にある。同社は2008年4月、トヨタ自動車との資本提携の拡大を機に、軽自動車からの撤退を決めた。当時、軽自動車は同社の国内販売台数の約2/3を占めていたし、同社が「スバル360」で自動車事業に参入して以来の伝統的な事業だ。日経ビジネスのインタビューで、森郁夫社長(当時)は、軽自動車撤退の理由について「当社は2010年までの中期経営計画に、重点項目として『スバルらしさの追求』『グローバル視点の販売』などを掲げている。この方針に沿って、どの部分を自前で行い、どの部分をアライアンスで補っていくかを考えた結果、コア技術である水平対向エンジン中心の展開を進めるべきと決断した」と語っている。

 ここで注目すべきが、重点項目として「グローバル視点の販売」を掲げていることだ。2007年(1月~12月)の同社の世界販売台数は約58万5000台で、海外生産比率は2割以下だったにもかかわらず、海外販売比率は6割以上を占めていた。これが2014年度には海外販売台数比率は82.1%に達し、そのうち米国での販売は57.9ポイントを占める。実質的には、米国での成功が今日の富士重工の好業績を招いたのは間違いない。

米国一本足打法が効率経営の秘密

 この「米国一本足打法」の経営は、結果として実に合理的な判断だったといえる。最近、あるコンサルティング会社のレクチャーを聞く機会があったのだが、ここで驚いたのが、世界の完成車メーカーが、どの地域で稼いでいるかについての説明だ。世界の完成車メーカーの営業利益の合計約11兆円のうち、約36%が中国で、約32%が米国、そして約10%が欧州で発生しているというのだ。ちなみに、日本市場で発生している営業利益は世界全体の5%で、完成車メーカーが日本市場に力を注がなくなるのも分かる気がする。

 米国は世界の自動車メーカーの稼ぎの約1/3を占める「稼げる市場」だということになる。ここに経営資源を集中することが、同社の効率的に稼げる体質を築く原動力となった。もう一つの稼げる市場である中国でも、2016年3月までの中期計画の中で、中国奇瑞汽車との合弁で現地生産を開始することを目指していたが、中国中央政府の許可が下りないことから、2012年3月に、事実上、現地生産計画を棚上げすることを発表した。