交通事故で民事責任を問われるのはドライバーだけではない。もし、クルマを所有する人が誰かにクルマを貸して、そのクルマが事故を起こした場合には、所有者も賠償責任を問われることになる。自分が運転していたわけでもないのに、もし自分のクルマを人に貸していて事故が起きた場合、自分がかけていた任意保険が使われるのはこのためだ。

 また運送会社の車両が事故を起こした場合などには、運転者を雇用している使用者の責任として会社が損害賠償責任を負うこともある。さらに、車両そのものに欠陥があった場合は、メーカーが「製造物責任法(PL法)」に問われる。道路に穴が開いていたとか、信号機が故障あるいは停電していたなど、道路や設備に瑕疵(かし)があった場合は、行政などが「営造物責任」を問われることもある。

 こうした観点から今回の事件を考えてみると、車両を保有するウーバーに民事的な賠償責任が発生するのは間違いない。これは上記のような、運送会社の車両が事故を起こした場合と同様である。実際ウーバーと被害者の遺族との間で、3月29日までに和解が成立したと報道されている。

 またトラックドライバーの例に即して考えると、今回ウーバーの自動運転車に乗っていた“ドライバー”に「不法行為」があった場合には、ドライバーにも賠償責任が問われることになる。ただ、実際に賠償責任が問われるかどうかは、ドライバーとウーバーの間でどのような契約が交わされていたかによって変わる。

 加えて、今後の調査によって実験車のセンサーの故障や自動運転プログラムの不備・不具合などが発見された場合には、PL法に基づく賠償が課せられる可能性もある。今回は、自動運転の実験車両を製作したのがウーバー自身なので、PL法に基づく賠償もウーバーに問われることになるが、もし今後、自動運転車両のメーカーと、それを運行する業者が異なる場合には、運行業者だけでなく、車両のメーカーもPL法に基づいて賠償責任を負う可能性がある。

難しい刑事責任の追及

 次に刑事的な責任を考えてみよう。通常の交通事故では主にドライバーが処罰の対象であり、メーカーの責任が問われることはまれだ。現行の道路交通法では、第4章に「(安全運転の義務)第七十条 車両等の運転者は、当該車両等のハンドル、ブレーキその他の装置を確実に操作し、かつ、道路、交通及び当該車両等の状況に応じ、他人に危害を及ぼさないような速度と方法で運転しなければならない」と定められている。これは、公道上での自動運転車の実験においても同様だ。

 国内では、公道上で自動運転車の実験を行う際のガイドラインが定められており、公道での走行の前に、テストコースで十分にシステムを検証することや、ドライバーに十分な訓練をすること、自動運転のシステムをオーバーライド可能(人間の操作を優先する)にすることなどが求められている。

 では、ウーバーやドライバーの刑事的な責任はどうなるか。まずドライバーについて考えると、公開された動画を見る限り、前方を十分に監視していたとはいえず、「安全運転の義務」を怠っていた可能性が高い。もしドライバーとウーバーの契約内容の中に「前方の監視は不要」などの項目が入っていればドライバーの責任は免除される可能性があるが、そうでなければ、少なくとも日本ならドライバーは安全運転義務の不履行で刑事責任を問われる可能性が高い。

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