これはプーリを20%小型化できた効果だ。プーリを小型化したことで、プーリをベルトに押し付ける油圧を減らすことができ、さらに、プーリが潤滑油をかくはんする抵抗も下がった。この副変速機付きCVTは、軽自動車から1.5Lクラスまでカバーでき、日産やスズキの軽自動車や小型車が採用している。
一方、ホンダやダイハツ工業の軽自動車向けCVTはインプットリダクションという方式を採用している。ホンダが軽自動車の先代「N-BOX」から採用している軽自動車用のCVTは、変速プーリに駆動力が伝わる前に、減速歯車によって回転数を落とす構造を採用している。これが「インプットリダクション」である。通常のCVTでは、エンジンからの駆動力はそのままCVTに入る。一方、インプットリダクションでは、いったん減速機構で回転数を落とすので、CVTのプーリはより低い回転数で回ることになる。
ベルトは高回転になると、ベルトを構成する金属帯同士の摩擦が増え、損失が増える。通常の車種よりも、軽自動車ではエンジンの使用回転数が高く、CVTの効率が落ちやすいため、この方式のメリットが大きい。インプットリダクション方式を最初に採用したのはダイハツ工業で、2006年から採用を始めた。ただし、ダイハツとホンダではCVTの前段に減速機を置くのは同じだが、ダイハツが後進用に搭載している遊星歯車機構を前進時の減速にも活用しているのに対し、ホンダは平歯車を使った専用の減速機を搭載しているのが異なる。ダイハツの方式は、追加する機構が少ないのがメリットだが、ホンダの平歯車を使った減速機のほうが伝達効率が高いという特徴がある。
今回紹介したほかにも、金属ベルトよりも伝達効率の高いチェーンを使ったタイプなど、CVTにはこれまでにも運転の楽しさや効率の向上、寸法や質量の削減を狙って様々な工夫が盛り込まれてきた。なので、もうそろそろアイデアは打ち止めかなと思っていたのだが、今回のトヨタの新型CVTは、冒頭に挙げたように、まだこの手があったかと思わされた。特に、筆者がCVTに対して不満を持っている加速時のリニア感を改善しそうな工夫だけに、早く実車で試乗してみたいと思う。
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