このライトサイジングというコンセプトは、訳せば「適正な排気量」ということになると思うが、無理なダウンサイジングはむしろ燃費を悪化させるというのは、以前からマツダが主張してきたことだ。マツダの主張によれば、ダウンサイジングによって確かに負荷の低い領域では燃費が向上するものの、中負荷領域以上では、むしろ燃費が低下するという。その理由として同社は、ターボなどの過給機を装着すると、エンジンがノッキングしやすくなるため、圧縮比を下げなくてはならず、熱効率が低下することを挙げている。

 これに対してアウディの新型エンジンは、排気量は従来の2.0Lエンジンから変えていないが、「2.0TFSI」というグレード同士の比較で、従来型と比較してJC08モード燃費を13.8km/Lから18.4km/Lへと約33%向上させている。新型は過給機付きのエンジンでありながら11.8という高い圧縮比を実現し、熱効率の低下を抑えているほか、低負荷領域では「ミラーサイクル」により燃費を向上させるようにした。ミラーサイクルというのは、吸気バルブを通常のタイミングより早く、あるいは遅く閉じるようにして、実効的な吸気行程を短くした燃焼サイクルのことだ。

 なぜそんなことをするのかというと、ポンピング損失を低減するためだ。この連載の第1回でも触れたのだが、ポンピング損失とは、エンジンが空気を吸い込むときの抵抗で生じる損失のことである。アクセルの踏み込み量が少ないときは、エンジンの吸気管にあるスロットルバルブが閉じ気味になるため、エンジンは入り口を絞った状態で空気を吸い込まなければならない。このため、空気を吸い込むときの抵抗が大きくなる。これにより生じる損失がポンピング損失で、低負荷領域では損失全体に占める比率が非常に高い。

ピストンが下がっている途中でバルブを閉じる

 これを避ける方法の1つが、この連載の第1回でも紹介した「EGR(排ガス再循環装置)」だが、もう1つの方法が、今回のミラーサイクルである。大ざっぱに言うと、通常のエンジンではピストンが一番上にあるときに吸気バルブを開き、ピストンが下がるのに伴って空気を吸い込み、ピストンが一番下に下がったところで吸気バルブを閉じる。

 これに対して新型A4で採用したミラーサイクルでは、ピストンが下がっている途中で吸気バルブを閉じてしまう。これによって、エンジンに吸い込む空気の量を少なくする。つまり、スロットルバルブを閉じ気味にして吸い込む空気の量を減らすのではなく、バルブを途中で閉じてしまうことで吸い込む空気の量を減らし、ポンピング損失を下げようというのである。

 この手法自体は、実は日本の完成車メーカーの多くが既に採用している手法で、特に目新しいものではない。ただ、今回のように過給エンジンと組み合わせるのは珍しい。というのも、そもそもダウンサイジングという手法そのものが、ポンピング損失を減らす手法であるからだ。同じ出力を得るのに、当然のことながら排気量の小さいエンジンのほうがアクセルの踏み込み量が大きくなる。その分、スロットルバルブが大きく開き、ポンピング損失を小さくできるという理屈だ。

 ずいぶん説明が回りくどくなったが、今回のエンジンは、エンジンの排気量を減らすよりも、ミラーサイクルを採用したほうが、燃費向上効果が大きいとアウディが判断したことにほかならない。今後も、このライトサイジングの動きが他のエンジンや、VWグループの他の企業にも広がっていくのか、非常に興味深いところだ。