「移動」だけではない楽しみ

Easy Rideのアプリは目的地ではなく「やりたいこと」を入力することも可能(写真:DeNA)
Easy Rideのアプリは目的地ではなく「やりたいこと」を入力することも可能(写真:DeNA)

 「餅は餅屋だな」と感じたポイントは、Easy Rideを使うためのアプリの完成度の高さと、サービス設計の緻密さにある。日産には失礼な言い方になるが、もし日産単独でこのサービスを設計していたら、ここまで完成度の高いサービスにはならなかっただろう。そこに、スマホアプリの開発企業であるDeNAと組んだ強みがあると感じた。

 その最たるものは、単なる移動だけでない楽しみをユーザーに提供しようとしている点だ。Easy Rideを使うためのアプリでは、目的地を直接設定する以外に「やりたいこと」をテキストまたは音声で入力し、お薦めの候補地を表示させてその中から選択することもできる。例えば「パンケーキを食べたい」と言えば、走行ルート周辺のお薦めのパンケーキ店を案内してくれるという具合だ。

 ほかにも、走行中に走行ルート周辺のスポットや最新のイベント情報など約500件の情報を車載タブレット端末に表示する。こうした周辺の店舗などで使えるクーポンを40件程度用意しており、それを自分のスマホにダウンロードして使うことができる。

ルート周辺の一部の店舗ではクーポンを発行する(写真:DeNA)
ルート周辺の一部の店舗ではクーポンを発行する(写真:DeNA)

 クルマが「モノ」から「サービス」へと移行すると、そのサービスを利用するためのアプリの使い勝手は決定的に重要になる。かつて個人間のモノの売買では、ヤフーが運営するオークションサイト「ヤフオク!」が圧倒的な地位を築いていた。ところが最近ではスマートフォン(スマホ)を使ったフリマ(フリーマーケット)アプリの「メルカリ」の台頭が著しい。これは、スマホで撮影したものをすぐに出品できるアプリの簡単さ、使い勝手の良さが評価されているためだ。こうした使いやすいアプリを開発することにかけては、この分野で経験を積んだDeNAのほうが日産よりも一枚上手だろう。

 今回の実証実験では念のためにドライバー席にはスタッフが乗車するが、基本的に運転操作はしない。さらに両社は、将来の無人サービス開始時にユーザーが安心して利用できるように、走行中の車両の位置や状態をリアルタイムで把握することが可能な遠隔管制センターを設置した。この本実証実験では、この遠隔管制のテストも実施する。

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