痛快な「アルト ワークス」
ここから先はオマケだが、イグニスの試乗会では15年ぶりに復活した新型「アルト ワークス」にも試乗することができたので、こちらの印象にも少しだけ触れておきたい。アルトにターボエンジンを積んだ車種としては、すでに「ターボRS」があるのだが、アルト ワークスは、ターボRSよりも最大トルクを向上させたエンジンを積み、足回りもより引き締まったセッティングとして、レカロ製フロントシートを採用したのが違いだ。

またターボRSにはない5速手動変速機(5MT)仕様を用意するとともに、手動変速機のメカニズムを使った5速自動変速機「AGS(オート・ギア・シフト)」も、アルト ワークス独自の制御プログラムに変更している。
走り出してしてまず感じるのは乗り心地の硬さだ。はっきり言って、もしファミリーカーとして買えば、家族からは文句が出るレベルである。ただし、走り好きのお父さんなら、しっかりと体を支えてくれるレカロシートのできの良さもあり、決して不快には感じないだろう。同時に意外だったのが、ボディ剛性の高さだ。少なくとも報道資料レベルでは、ノーマル車から車体を強化したとは書いていないのだが、このハードな足回りから伝わってくる衝撃を、車体がしっかりと受け止めている様子が伝わってくる。だらしなくフロアが振動したりする様子はまったくない。
新型アルトに採用された新型プラットフォームは非常に軽量なのが特徴で、正直、ボディ剛性に関してはあまり期待もしていなかったし、実際にノーマルのアルトではそれほどとも思っていなかったのだが、なかなかどうしてしっかりした車体である。
肝心の動力性能だが、その加速力は、自分がいま乗っているのが軽自動車だということを忘れさせるものだ。今回は5MTの試乗車を選んだのだが、アクセルを踏み込んだときに高まるエンジンサウンドも、排気量0.66Lの3気筒エンジンとは思えない重厚な音がする。その音の大きさもまた、同乗する家族からは苦情が出るかもしれないレベルではあるのだが…。
そして試乗の最後に驚かされたのが、さきほどのイグニスと同様に御殿場から箱根に登って降りてきた1時間ほどの試乗における燃費が、燃費計の読みで22.3km/Lだったことだ。これは、プリウスやアクアといったフルハイブリッド車と同等以上の値である。手動変速機のクルマは伝達効率が高いので燃費が良くなる傾向はあるのだが、変速動作の必要がないAGSのモデルでも、実用燃費は20km/Lくらいは期待できそうだ。これなら、乗り心地や騒音さえ許容できれば、普段使いに十分使える。
惜しむらくは、その外観の派手さだ。車体側面に張られたデカールや、クローム色にメッキされたヘッドランプ周りなどは、お父さんが乗るにはちょっと気恥ずかしい。外観は限りなくノーマルに近い「羊の皮をかぶった狼バージョン」を出してもらえたら、家族には普通の軽自動車を買ったように見せかけられるのに。そんなお父さんが、きっといるのではないだろうか。
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